ベクシンスキー
11/10/06
つい先日、祖母が亡くなった。

祖母と言っても父親の祖母なので、オレから見ると曾祖母にあたるわけで、家が遠い事もあり疎遠になっていた。

疎遠だったとは言え、曾祖母が亡くなったのだからお葬式には当然参加し、めったに会う事のない親戚達とも数年ぶりに会う事となった。

オレのスペックを書き忘れていたので、簡単に書かせてもらう。27歳独身(ばついち)会社員。この歳で曾祖母が最近まで健在だったのは珍しい方ではないだろうか。

この話はこの曾祖母のお葬式のため、親戚で集まった時の話になる。
曾祖母と私が疎遠であったと書いたが、小学校に入る前(6歳?)の時に1ヶ月ほど曾祖母の家で一緒に暮らした事がある。

これは父親が家を新築する際に工事に遅れが生じたため、家の完成前に住んでいたアパートを出る事になったからだ。

曾祖母の家は福岡県の田舎町にあり、近所にはゲートボール場や長屋の立ち並ぶ住宅街、何作ってるかわからない畑。

小学校に入る前の好奇心旺盛な少年には毎日ちょっとした冒険だったのを覚えている。

話を元に戻すと曾祖母のお葬式では曾祖母の年齢が100歳手前だっただけに、悲しみに包まれたお葬式というよりは『曾祖母はすごい!』と褒め、生前はああだったこうだったと、思い出話をしながら曾祖母を送る様な雰囲気だった。

お葬式は近所の葬儀場でやったのだが、親戚一同は曾祖母の家へと場所を移し、思い出話をしながらの宴会をした。

曾祖母の家にあった写真のアルバムを見ながらなつかしむ親戚達。

オレは曾祖母の思い出と言えば小学校に入る前くらいの記憶がメインだったため、アルバムを見ても知らない人の写真ばかりでやや退屈していた。

その時、『お、Sがおる!』(Sは父親)という声に再びアルバムに視線を戻すと…なんともDQNな父親の姿が…、なんで高校に通学するのに白のスーツなんだよwと(苦笑)

アルバムも古い方から順に見ていたので、父親の高校時代…成人式…と次第に現在に近づいていた。

オレの誕生…例の1ヶ月の同居…ここで1枚の写真を見て、気づいた事があった。

1枚の写真を見て気づいた事というのは、曾祖母と親しくしていたはずの、のりちゃんがお葬式に来ていない事だった。みんな、のりちゃんの写真を見るなり笑顔が引いた様に感じた。

のりちゃんは以前からいつも一人で遊んでおり、近所の小さな子供のいる家から気味悪がられて苦情がきたりと、ちょっとしたトラブルメーカーだったらしい。

しかし曾祖母は器の大きな人で、のりちゃんの一人遊びを止める事はしなかったらしい。

むしろ苦情を出してきた家に「そんなに心配なら子供を家から出すな!」と言い返したそうだ。

実際、のりちゃんは年齢が45歳くらいという事で、周りから見ると45歳のおっさんが小学生の様に一人で外で遊んでいるのは気味が悪かったのかもしれない。

だが誰にも迷惑をかけてないのも事実だ。

のりちゃんの話題でみんなの笑顔が消えた事を不思議に思いながらも、そのまま宴会は終わり、遠方から来ている人は曾祖母の家に泊まり、近所の人は各自家へ帰っていった。

オレも酒を飲んでいたため、曾祖母の家に泊まる事にしていた…が、曾祖母の家の近所に住んでいたM姉ちゃん(35歳バツイチ)に誘われ、市街に飲みに行く事になった。

M姉ちゃんは血の繋がりとしてはかなり遠い親戚だったが、先輩の先輩というか友達絡みの繋がりが多かったため仲良くしていた。

M姉ちゃんなら小さい頃から曾祖母の家付近に住んでおり、詳しいだろうと思い、思い切って「のりちゃん」はどうしたのかと聞いてみた。

M姉ちゃんいわく、高齢になってきて面倒を見る人もいないので、施設で暮らしているらしいとの事。

親戚一同はのりちゃんの面倒を見ずに施設に入れた事に負い目を感じ、写真の時話題に出さなかったのかなと一人納得した。

深夜2時くらいまでM姉ちゃんと飲み、タクシーでM姉ちゃんの家に帰宅。この日は泊めてもらう事にした。酒を飲んでいる事もあり、二人とも即爆睡。

朝か、と思い目を覚ました時にはまだ周りは真っ暗。時計を見ると寝てから1時間もたってなかった。

1時間も寝てないのにこのすがすがしさは何だ…と、不思議に思いながらももう一度寝ようと目をつむる…が、なかなか眠れない。しばらく目をつむっていれば眠れるかと思ったが全然眠れる気がしない。

そのままカッチカッチと響く時計の音を聞きながらぼーっとしていた。何時間そうしていたのか分からないが、急に曾祖母の家で見た写真の事を思い出した。

「やっぱり気になってたのか」

自分の中の自分が囁く。なんとなく怖い感じがして、できるだけ考えない様にしていたのに、どうしても写真ののりちゃんの事が何か気になるのだった。

思えばオレが曾祖母の家に住んでいた一ヶ月間、のりちゃんと一緒に遊んだ記憶はある。いつものりちゃんはお昼すぎに曾祖母の家のたずねて来て…オレは一緒に畑や近所の空き地に行って遊んでいた。

そこまでは思い出せるが何かが引っ掛かる。何もしっくり来る回答が出ないまま昼すぎに目を覚まし、M姉ちゃんに礼を言って帰った。

この日は日曜日だったため、たまには実家に帰ってみようと思い車で実家へ向かった。

昨日お葬式で会ったばかりなので両親とも久々に会う感じはなかったが、久々に実家の犬に会った。完全な猫派のオレも、実家の犬は可愛い。

しばらくのんびり過ごしていたが、やはり「のりちゃん」の事が気になり、『のりちゃん覚えてる?』両親に切り出してみた。

両親も当然覚えており、のりちゃんの事は良く思っている様で意外と軽くのりちゃんの思い出話になった。

小さい頃のオレを連れて、のりちゃんはあんなことしたこんなことした…と微笑ましい話ばかりだ。

この話の中で意外な事実を思い出したが、驚くと一気に恐怖心が湧き上がってきそうだったのでぐっとこらえた。

6歳の頃のオレは母親に「のりちゃん」と「やんしゃん」と3人で遊んだと、よく言っていたらしい。

やんしゃん、名前を聞いて思い出したが今思えばありえない存在だった。オレの中で、どんよりして嫌な記憶がよみがえった。

やんしゃんは、いつものりちゃんと一緒にいた人で遊ぶときも大体一緒にいた。あいまいな記憶だが、一緒じゃない日もあったが80%くらいはのりちゃんと遊ぶときはやんしゃんもいた。(気がする)

昼前に曾祖母の家にのりちゃんが来たときは、曾祖母はオレとのりちゃんの分の昼食を準備してくれるのだが、やんしゃんの分はない。

オレとのりちゃんの食事中はやんしゃんは、のりちゃんの後ろでかたひざ立てて座っていた。

曾祖母はやんしゃんと会話をする事もなければ、目をあわす事もない。今思えばオレもやんしゃんと会話をした記憶はない。ただのりちゃんが「やんしゃん、やんしゃん」と呼び、親しくしているので一緒にいただけだった。

やんしゃんは学生服の様なズボンをはいており、上半身はいつも裸。髪の毛はのりちゃんとは違い、真っ黒で丸坊主。歳は30歳くらいだったろうか…よくわからない。

痩せているわけでもなく太っているわけでもなかったが、腕は太いなあ…と思っていた気がする。声は聞いた事がない。

のりちゃんはやんしゃんとどうコミュニケーションをとっていたのか分からないが、時々何かしらのやり取りの後にキャッキャと喜んで騒ぐ事があった。

内容は理解できなかったが、のりちゃんが爆笑するのでオレも一緒になって笑っていた。やんしゃんは騒ぐどころか真顔のままだったのを覚えている。

ある日こんなエピソードがあった。いつもの様にのりちゃんがオレを迎えに曾祖母の家にやってきた。これから一緒にやんしゃんを迎えに行こうと言うのだ。

曾祖母の家から30分程歩くと駄菓子屋があり、その店には100円入れると2回遊べる格闘ゲームが置いてあった。やんしゃんを迎えに行く途中、この駄菓子屋の前を通りかかった。

ゲームを見るなり、のりちゃんがこれで遊ぼうと言うので、やんしゃんの事も忘れてありったけの金をつぎ込んでそのゲームで遊んだ。

駄菓子屋のゲームをやったり、駄菓子屋の向かいにあった公園で遊んだりしている内に夕方なり、そろそろ帰ろうかということになった。

帰り道で今日はやんしゃんを迎えに行くはずだった事を思い出した。やばいと思い、のりちゃんに大丈夫かな?と聞くと、のりちゃんはさっきまでやんしゃんも一緒にいたと言うのだ。

絶対にいなかったはずだが…と思いながらも、来たのならあいさつくらいしろよと少しイライラした。

オレの中でやんしゃんの思い出はこれ以外にはない。やんしゃんとは時々何かをのりちゃんに囁いて、のりちゃんを爆笑させる存在。

話を戻すが、この日は夕食を実家で食べて車で自宅へと帰った。帰りつくなりM姉ちゃんに電話し「やんしゃん」知ってる?とたずねた。M姉ちゃんはやんしゃんを知らなかったが、なぜ?なぜ?としつこいので上に書いた内容を全て説明した。

するとM姉ちゃんは満足そうに「調べとくよ」と、軽い感じで答え、電話を切った。それから3日後(昨日の夜の事)M姉ちゃんから電話があった。

少し忘れかけてたのりちゃんや、やんしゃんの事を思い出しテンションが下がったが、電話に出た。すると意外にも元気な声で話しかけてくるM姉ちゃんに少し安心した。

M姉ちゃんの調査報告は下記の通り。

・M姉ちゃんの父親はのりちゃんと歳が近く、のりちゃんの高校時代から知っていた。

・のりちゃんは二十歳くらいの時までは健常者で、仕事(土木)中の事故で入院してから少しおかしくなった。

・のりちゃんの事故は原因不明。道路を作るときに地面に埋める鉄板?がクレーンのヒモが切れて落ちた時にのりちゃんに当たった。

・のりちゃんは片足を複雑骨折し入院。(ほぼ片足ちぎれる寸前の様だったらしい?)

・入院中から言語障害が出た。

・のりちゃんと同じ病室にやんしゃんと呼ばれる患者が入院していたらしい。

・退院後、のりちゃんの知的障害はどんどんひどくなった。

・退院後、一人で徘徊し、ひとり言や急に爆笑したりする様になった。

・事故で入院する前から孤独で、友達はいなかった。

のりちゃんの事はなんとなく分かった気がするが、やんしゃんは入院したときに病院で知り合ったって事以外は不明。

オレが6歳の時は、のりちゃんの事故から25年近くたっていたはずだ。のりちゃんが二十歳の時に病院で知り合ったやんしゃんと25年近くも一緒に外で遊んでたってわけか…?なんか考えると鳥肌が立った。

ケガの程度は重かっただろうが、足をケガしただけののりちゃんが知的障害をわずらい、どんどん悪化しているのもおかしい。

やんしゃんに関して詳しい話はM姉ちゃんからは聞けなかった。内心怖いし、どうでもよくなってきた。早く忘れたいと思った。

677:2011/10/06(木)18:13:21.94ID:MK9XSavW0
※本当は一個前のレスで終わる予定でしたが、先ほどM姉ちゃんから電話があったので追記。

今でものりちゃんは施設で「やんしゃん」の名前を出すと言うが、のりちゃん自体ほぼ会話にならない状態なので詳しくは聞けないらしい。

のりちゃんの事故・入院と同時期に、バイクで事故を起こし頭蓋骨が割れる程のケガをした人がいたという。

その人はのりちゃんと同じ病室で入院していたが、事故から3日ほどでなくなってしまったらしい。

その方の名前は山根さんというらしく、山根さんのお母さんとのりちゃんの友達は病室であいさつをする中だったと…

やんしゃん=山根さんだったとしたら…

考えただけで胃が痛くて、すごい怖い感じがするのでこれ以上は詮索しません。長いだけで大して怖くなくてすみませんでした。