救急

大好きだったじいちゃんが死んだときの話なんだけど、通夜の当日、俺はじいちゃんの冷たくなった顔を朝から何度もなでていた。

葬式の準備で忙しくて夕食を作る間もなく寿司の出前を取った。何のためらいもなく俺は手づかみで寿司を食った。

みんなと同じように準備を進めていると、どこか体の一部を金属製の鈍器で激しく殴られたような衝撃を感じ俺はうずくまった。

「ううぅ」

もはや声すら出ない。衝撃の震源地は腹部だった。あまりの痛さに、俺はひょっとして何者かに銃撃されたのかもと本気で思っていた。(当時警察庁長官が狙撃される事件があった直後だった)

しばらくして妹も同じようにうずくまり同様に父と母も同じ症状をになった。当時家には親戚と家族合わせて二十人くらいいて、祖母だけが無事で後は全員倒れていた。(原因は食中毒だった)

祖母はパニックになり近所の交番へ走った。しばらくすると祖母が警官を一名連れて戻ってきた。俺たちはその間中ずっともがき苦しんでいた。

警官もかなりパニックになっていた。無線であちこちに応援の要請しながら家の中を捜索してやがてじいちゃんの遺体のとこにたどりついて(俺はその部屋にいた)

「一名心肺機能停止状態!」

と叫んでいた。

俺は意識もうろうとして必死で誤解を解こうとしていたが声の出ない状態でどうしようもなかった。救急車が何台も来て大騒ぎになったらしい。

救急隊に運び出される直前、さっきの警官がじいちゃんに必死で人工呼吸しているのを見ながら俺はゆっくりと意識を失った。