昔、長崎で商売をしていた伊勢屋に、仲のいい中国人が帰国の別れを告げにやってきた。
挨拶が済んだ中国人は、帰りがけに土蔵の石垣をじっと見ていたが一つの青い石を指さして、「この石を譲っていただけないでしょうか。」と真剣な顔をして、伊勢屋の主人に言った。
主人はびっくりして、「この石をとりますと、石垣が崩れるのでそれだけはご勘弁ください。」と言って断ると、その中国人は百両出すと言い出した。
それを聞くと伊勢屋の主人は急に欲がわき、一千両ならばというと、中国人は考えさせてくださいと言って、中国に帰って行った。