あれは俺が5年生の頃だった。
俺の家族は、その時アパートの3階に住んでいたんだ。
あるとき、上に住んでいた4階の住人が引っ越した。
夜中とか結構ドタバタうるさい所だったんで、正直ラッキーぐらいに思っていた。
次の日、弟が俺をその4階の部屋の前まで引っ張って行って、「いいもの見せてあげるよ」と言った。
「ほら、ここの家鍵が閉まってないんだぜ」
本当だ。きっと住人が出て行くときに閉め忘れて、大家もチェックをするのを忘れたまま帰ってしまったんだろう。
もちろん、家具などは運び出されてしまっていてもう無いが、
自分の家とまったく同じ家具の無い部屋の中にいると、不思議にワクワクしてくる。
俺達はその部屋を秘密基地にすることに決めた。友達にだって内緒だ。