むしろ実話でないと信じたい。
妊娠した妻が定期健診のため、とある産婦人科に通って数ヶ月のことだった。
ホスピタリティを重視してのことか、マタニティ専用の部屋というか、共有ルームみたいなものを設置していた。
総合病院だったため、設備に余裕があったからだと思う。
妻はそこで妊娠を控えた女性と共に、いろんな話を共有するのが日課になっていた。
いわゆるママ友みたいなものなんだろう。
俺も食事のときに、そこで話されたことをいろいろ聞かされていた。
ある日、妙な話をし始めた。
今思い出しても奇妙な話だ。
どこのコミュニティにも仕切り屋というかリーダーのような人物がいるものだが、
俺の妻のママ友たちの中にも例に漏れずそういう女性がいた。
自分磨きや女性らしさの追求を述べるこの女性は、外見だけでなく内面も洗練するべきとの考えから、
デカルトではなくユング的発想、つまりはオカルトのようなことに凝りだしたそうだ。
簡単な占いからはじまり、霊的な癒し、果ては黒魔術チックな呪術と話しだす彼女に対し、
妻は一線を画すよう心がけていたらしい。
オカルトについては私も少し興味をもっていたことから、興味本位で黒魔術について問いただしたことがあったが、
猫の死骸や害虫の収集などの話がなされたことから、打ち切りをお願いしたことを覚えている。