裏路地
16/07/11
30年くらい前の話。

うちの向かいに、腰の曲がった婆ちゃんとボケた爺ちゃんとその息子の3人が暮らしていた。

爺ちゃんは滅多に見かけなかったんだけど、婆ちゃんはよく庭のそうじしていたり、すぐ近くの公園に勝手に花植えて世話してたりして、毎日の様にあいさつしてた。当時俺は5才くらい。

ある日、母親から「お婆ちゃんが入院した」と聞いた。実際その後数日、お婆ちゃんを見かけなくなって、寂しいよなあと友達と話をしているところで夏休み突入。

俺は毎年夏休みになると初日に父方の実家に一人でいかされて、お盆になって両親がきて合流して家に帰っていた。

で、その時も普通に田舎に帰ろうとしてたんだが、朝準備してたらいつも通り庭先を掃く音が聞こえたので、窓からのぞくと婆ちゃんがそうじをしていた。

「ばーちゃん!退院したの?」と窓から聞くと、婆ちゃんはこっちを向いてうんうんとうなずいた。

急いで降りていき、母親に報告して向かいの家にいき、婆ちゃんのためにつくった折り紙を渡して

「またお盆終わったら帰ってくるから!」

と報告すると、頭をなでてくれた。母親も

「お元気そうでよかったです^^」

とか普通に話をして、その後田舎に向かった。しばらくして、お盆になって両親が田舎にきたんだが、その時母親が

「ねぇ。あの時、夏休みの初日にお向かいのお婆ちゃんにあったわよねぇ?」

と確認をしたので

「うん。折り紙を渡した」

といったら、父が

「だから、それはお前らの勘違いだと言ってるだろ」

と叱りつけた。

あの日、夏休みの初日。俺を空港まで送って家に帰ると、お向かいの家がバタバタしていたので母が顔を出したら、息子さんが「今朝母が亡くなって…」と言っていた。

数日前に入院した時点ですでに意識がなく、その日の早朝意識が戻らないまま亡くなったらしい。

あの日みた婆ちゃんは一体何だったんだろうなあ。一人だと「子どもの勘違い」で済まされるかもしれんが、母親も見てるんだよな。

でも、オバケとかそいう感じじゃなく、普通にそうじしてたし、折り紙も受け取ったし会話もしてたし…謎だわ。