奇妙な体験

04/05/19
大学の施設警備やってたんだけど、巡回業務があるんだよ。使っていない教室を点検したりとか、施錠されてるかとか、夜間巡回とか。

夜間の巡回中に本館から少し離れている研究棟の巡回をした時に、この時間だったらもう誰もいないはずなのに(入り口は施錠もされていた。)中に入ったら、誰かいるんだよ。

中は薄暗くて顔もハッキリ見えないくらいで、おかしいなと思った俺はその人に

「どうしました?」

って声かけたの。

そしたらその人は俺を無視して階段をのぼり始めたんだよ。不審者だと思った俺は防災センターに無線で連絡して、そいつの後を追い始めた。

だいたい十五mくらい間を空けてずっと後をついていったら、そいつは階段を最後までのぼりきって屋上に出て行った。

屋上はいつも施錠されていて、外に出る時は絶対に鍵を開ける音がするはずなのに音がしなくて、おかしいなと思いつつも俺はそいつの後から屋上に出た。

そこで見たものは、柵(俺のアゴくらいの高さ)の前にきちんと揃えて置かれた、男物の一足の靴と柵の向こう側に立っている男の背中だった。

で、そいつがいきなり消えたんだよ。飛び降りたと思って、驚いてそこに駆け寄って柵のすき間から下を見ると、地面には身体の中身を派手にぶちまけた人間が横たわっていた。

ここまではただの飛び降り発見で済んでたんだけど、後から変な話になってきたんだよ。

警察で俺は第一発見者として事情聴取を受けたんだけど、検死結果と俺の話が見事に噛み合わないの。

どういう事かと言うと、死亡推定時刻が、俺が発見する八時間も前だったんだってさ。何度も警察にも説明したんだけど、俺は絶対に途中でそいつを見失ったりしてないんだよ。

そいつが消えたのも見てるわけ。ただ、思い返してみると地面に衝突する音とかを聞いた記憶がない。

そいつはその研究棟に入っている研究室に所属してる院生で、個人的な事情でずいぶん前から悩んでいて精神科にも通院してて、事件性は無しって事で俺もそれ以上は疑われたりはしなかった。

けど、その後別の教室で首吊り自殺とかあったりして、気が悪くなって警備会社自体やめた。

あんま怖くないかな?ごめん。