2012/03/15
まあ書いたことそのままなんだけど、俺は11歳頃まで父方の実家で、父・母・祖父母(+数年後に弟)と一緒に暮らしてた。
で、この祖母と母の嫁姑仲が最悪に悪かった。そこから恐らく全て始まったんだけど、まずババアは母の出産自体気に食わなかったらしく、生まれたばかりで退院して間もない俺の額を指で凹ませて殺そうとしたことが二度ほどあったらしい。
んで当然ながら時間がたつにつれて和解。おばあちゃんは優しくなりました。
なんてことはなく、まあ虐待じみたことを10年ほどがまんしてたんだが、ついに母親が切れて父と離婚→俺と弟を連れて引越しし、ババアとの縁は切れた。
かに思われたんだけど、その日、去年の3/11の時にはちょうど爺さんの命日で、爺さんには何かと世話になったということで、実に9年ぶりに父方の実家に戻っていた。
その時家にいたのは俺、弟、ババアの三人。(母と父は仕事で夜に来ることになっていた)ちょうど出前の昼飯を食い終わり、コタツで週間ナントカという女性向け雑誌見てる時だった。
バキン!ととてつもない音がなり、家全体が持ち上げられて落とされたような衝撃。それからバキバキと家全体を鳴らしながら本当に身動きが取れないほどの縦揺れが続いた。
俺は四つん這いでコタツから這いでて玄関に向かい、高速自動ドアと化してる扉を抑えつけて大声で弟を呼んだ。
爺さんの書庫で官能小説漁ってた弟が同じく四つん這いで生まれたての子鹿みたいに這って出てきた。
その時、ババアは仏間。完全にババアのことは頭になかった。
なんとか弟を家から出し、降ってくる瓦を避けながら庭で2人うずくまっていると、ガラス越しに仏間でうずくまるババアの姿が確認できた。
その頃には揺れがだいぶ収まっていて、他の家々から人が出てきて安否確認なんかをしていた。俺は何を思ったか再び家に、ババアを救助しに入った。
ババアは半分泣きながら爺さんの位牌と経典?のようなものを抱えて、何かぶつぶつと念仏のようなひとり言のようなものをつぶやいていた。俺は硬直してるババアの腕を取って
「ばあさん危ないから家出よう」
とかなんとか言った。
ここでババアまさかの
「やんた(嫌だ)」発言。
家の中はめちゃくちゃ、瓦もガラスも散らばっていて、外では防災無線がガンガン鳴り響いている中、
「えさいればいい!おはいる!(家にいればいい!私は逃げない)」
俺パニック。家は高台にあったが海に近く、津波はとてもここまできそうにないが次揺れたら家は潰れそうなくらいのギシギシっぷりだった。
ババアの両肩をつかむと羽交い締めのように抑えつけ、比較的ガラスが飛び散っていない縁側からババアを連れて脱出した。
ババアは発狂していた。外では防災無線がますます鳴り響き、海抜の低い下の方の家の住民がわめきながら坂を登ってきたり、糞狭い小道を軽トラがギチギチに占領していたりでえらい騒ぎだった。
ババアは庭に出してもまだ尚何か叫んでいて、家は誰が守る?とか、通帳はどこだ?とかあとはほとんど訛りが強くて聞こえなかったが、とりあえず大いに取り乱していた。
弟だけは冷静に携帯を開き、電波が全く通じないこと、恐らく津波が来ること、車で逃げると死ぬかもしれないこと、母と父は内陸部にいるので恐らく無事であろうことを淡々と俺に説明した。
この時点で恐らく15:00ころ。
家の脇の道路を見ると車がありえないほど渋滞していて、車の隙間を縫うように下から人が避難してきていた。ここでババアがまた大声を出す。
「遺影もってこ!!(遺影を持って来い)」
その後、通帳とタンスの金もだ!とまくし立てるように言うと俺に指を差した。
俺「そんな時間ない!山に上がるぞ!」
弟「裏から行こう。ばあちゃん俺が担ぐから兄は道確保して」
ババア「おらはいかねえ!爺さん置いてくのか!?財布も忘れだ!!」
ババア、頑として譲らない。
そこで俺もちょっと油断した。うちは高台にあるから津波なんてここまで来ないだろ。ババアを黙らせるためには仏壇の写真をとってくればいいんだ。
弟に先にいけ、ばあさんは俺が連れて行く。と言い、再び家に。余震が続いていてガラス片がバリバリいいながら降っていた。
俺が倒れた仏壇の下から遺影を引っ張り出していると、なぜか家の中までついてきたババアが
「それでねえ!大きいのだ!上のだ!」
と、梁に立てかけてある、肖像画くらいの大きさの爺さんの遺影をアゴをしゃくって挿した。
梁ははしごを使わなければとても手が届かない。俺もだんだん冷静になって頭に来始めて、
「そんなもん無理だ。自分で取れ!」
と怒鳴った。家の外から
「来たぞー!!」
と誰かが叫ぶ声が聴こえた。
また余震だと思った。とんでもない音で地鳴りが鳴り始め、外では逃げろ!とか早くしろ!とか、一人ではなく大勢が叫んでいた。
ただならぬ気配に外に飛び出した。坂の下、海のほうを見下ろすと砂浜がなかった。真っ黒い墨汁のような水が防波堤ぎりぎりまで満たされていた。
「津波だー!!」
と、誰かが叫んだ。
俺「ばあさん!だめだ!もうダメだ!津波が来た!写真持ったべ?逃げるぞ!」
ババア「財布はどこだ!?」
坂の下の方では声をかき消すくらいバリバリと雷と台風でもいっぺんに来たような轟音が鳴り響いていた。
俺は問答無用でババアの腕をつかんで裏口へと走った。横目で坂の下を見ると、幼なじみの実家に波に流された軽トラが突き刺さっていた。
俺「ばあさん!弟は!?先に行ったか!?」
ババア「財布とってねえ!おめえ、写真どこさやった!?おい!」
ババアも俺に渾身の肩パンを繰り出しながらずっと叫んでいた。ずっと後ろの方で悲鳴が聞こえていた。
裏口を回って山道に出る。少し見通しのいいそこに立つと、うちの二軒下の家に大量の瓦礫がぶつかってドリフのコントのように押し流されているところだった。瓦礫の中に赤い服着た人間が混じってた。
どう考えてもここまで来る。それもあと数十秒で。あ、死ぬの?と漠然と思った。ぽかんとしている俺の肩をババアが突き落とすように押した。
ババア「写真どこさやった!おら位牌ももってねえが!!おめえ早く取って来い!!」
ババアは今津波に飲み込まれようとしている家に戻れと、俺に言っていた。
俺はそこで我に返って、急いで後ろの急斜面の何の舗装もされてない山を四つん這いで登った。ババアが俺の脚をつかんで引きずり下ろす。
俺「おい!おい!死ぬんだぞ!おい!津波来てんだぞ!」
ババア「早く行け!おめえ、誰が育てたと思ってる!?」
俺「何いってんだお前!早く登れよ!なんなんだよ!」
ババア「おらが生かしてやったんだぞ!!おめえを!あん時死ねばよがったんだぞ!早く行け!!」
泥まみれの土まみれで四つん這いのままババアを振り返ると、ババアは俺の脚をつかんで、子供の頃に見たあの人呑鬼(じんどんき)そっくりのブチ切れ顔で俺をさらに引きずり降ろそうとしている。
ババアの後ろには家と、車の塊。俺が戻れと言われていた実家はもう瓦礫にもみくちゃにされて、今まさに砕けているところだった。
ババアの顔を見て、小さい頃のババアとの思い出がパラパラマンガみたいに脳裏に蘇った。
猫が食った後の残飯を食わされたことや、部屋の隅にビニールテープの陣地を作られてそこを出ると殴られたことや、母ちゃんの悪口を書いた手紙を読まされたこと、飼ってたインコに粉洗剤を盛られたこと。
そんで出ていくきっかけは俺を生垣から突き落としたことだったなあと。
急に冷静になって、「あ、うん」なんて返事をして、腰を捻って下にいるババアの両腕を引っ張りあげるようにつかんだ。
大部分の瓦礫は道路側に逸れて、流れの早い波がさっき上がってきた裏庭を駆け上がってきていた。
俺が気の抜けた返事をしたからか、自分を引っ張り上げてくれるような動作をしたからか、ババアは一瞬素の顔に戻って力が抜けた。
そんでそのまま、両腕を持ったまま、ババアを下に向けてポイっと放った。ババアは一段下の山道へ尻餅をついて、「おい」と普段呼びかけるようないつもの調子で言った。
いつもの顔をしていた。俺はそのまま四つん這いで山を駆けのぼった。ゴーゴー爆音がそっちこっちで鳴り響いていて、夢中で登った。
今どこまで津波が来ていて、自分の進んでいる方向は正しいのか、一切わからなかった。
どのくらい登ったかは定かじゃないが、ふと後ろを振り返ってみると7mくらいの所で波は止まっていた。波が引いていくのを見て、ババアの姿を瓦礫の間に探したがもう居なかった。
あれから一年たつがババアは未だに見つかっていない。
以上で話終了。
家族で死んだのはババアだけで、ババアの死亡届は親父の手によって早々に出されたらしい。
ちゃんと探したのかどうかもわからんが、これ以降親父の親族近辺には関わっていない。
コメント
コメント一覧
この婆は地震の前から頭おかしいんですがそれは...
酷かったがこのBBAほどじゃなかったな。
(父は祖母というか実家が嫌いだった様ですw)
投稿主というか主役君が助かって良かった。
話の流れなら母親が仕事終わってから一緒に行くでしょ、仲が悪いのだから。
創作ですね。
突き放した時の普段の感じのおいってのもすごくリアルだと思う
悪いことしてきたババアだとしても
その瞬間を見てしまったら可哀想に思ってしまう
子孫の生存を脅かすほど執着してるなら家に置いてきても本望だったかもな。
なんつうかかんつうか
本当に。
婆以外無事で本当に良かった
面白かった!
普通じーちゃん、ばーちゃんの仕事は親に怒られた時とかのかばってくれたりとか、
孫がかわいくて仕方ないって感じなんですけどね。
やっぱり・・・・・・
大勢居るんだろうな
バカヤロー!バカヤロー!バカヤロー!
よくやった。がんばったよ。
死んで当然のカスだよ
過去の事を思えばここまでばばあを助けようとする義理すらない。
その神経に驚きだわ。腐ってんな。
嫌いな身内や同僚コロしたとか
ありそうだよな、マジで……
精神の糸が切れた瞬間の描写が生々しい…
あの日、自分の住む茨城でもすごい揺れが起きて、外に出て家族と固まってた時、まさか東北の人たちが津波にあってるとは思わなかったよ…
内容と関係ない話をすみません。
これだけ写真探すのつきあってあげて助けようとしたんだから十分だよ
ずっと足つかまれてたら自分が助からなかっただろうし仕方ないと思う
どう読んでも創作。穴が多すぎるよ。
災害時に、ばばあコロスって発想はいいけど、もう少しディテール詰めなきゃ、
馬鹿しか釣れないよ。
小説家じゃあるまいし。
スグ”創作”って決めつける連中って、どれくらい文才があんのかね?
実際東京行きが家族会議で決まったその日の夜に体育館裏(避難所の)で首吊りしたじじもいるらしいし。(ニュースでやってた)
別にこの人が56したんじゃない。婆が「そういう」選択をしたんだ。自決だよ。
あと、なんでもかんでも創作と思ってる人っていちいち決め付けないと気がすまないの?
うるせえから見るのも書き込むのもやめてくんない?
夫は流されながらも片手で妻の腕を摘みもう一方の手で側を流れてきたコンテナにしがみつく。
すると背後から「間男と違い貴方は私を捨てなかった。やっぱり愛されているのね」
という声が聞こえなぜか妻の腕をつかんでいた手から力が抜けた。
もがきながら波間に消える妻の姿を見た気がするがよく覚えていない
って話があったがアレも怖かったな。
一人で逃げてもしょうがない状況で、そんなやつを何度も助けようとしただけでも偉いよ
ご家族もご無事で良かった
自力で上がれない人は放置してok
消防団の方々が寝たきり老人を避難させようとして亡くなってしまったし
あの津波では全員助けるのは無理だ
助かったとして避難所暮らしが無理だよね…
火災起きたときに知人は他は何も持ち出せなかったのに位牌だけ抱えてた
板だし生きていたらまた名前書いてもらえばすむやんと思うんだが違うのか
ざまぁw
虐待してきた相手をギリギリまで助けようとして偉いよ
お婆ちゃんを落とした時の、いつも通りの表情っていうのがなんか辛かった
若いのに。
やられたことはやり返してOK
釣りだと思うけど面白いからオッケー
何家に戻ってんのよ、放っときなされ。
恨みのない相手や、逆に愛情を感じる相手だったら、その後主さんが苦しんだかもしれないが、
見捨てても後悔や自責の念を感じずに済んだのは、むしろ「恨まれるような存在でいてくれてサンクス」って感じじゃないか。
だってそれこそ例えば流されたのが弟だったら、主は今でも辛いだろ。
地元から出て今、地元の友達との繋がりがないから詳しい話があまり聞けない状態のまま数年過ぎてるからなぁ
知らないだけで今更だが「実はあいつが」とか聞いたら辛いなぁ
みんな無事でいてほしい。連絡とれないヤツもみんな。
そしていま熊本震度7の速報が入ってきて震えた
こいつは全然悪くねえよ
逃げる様子とか臨場感溢れるわ
嫌いな奴をあえて助けず見殺しにしたやつを知ってる
この話を創作とはいえないと思う
まともなばあちゃんだったら助かってた(助けられてた)けど、こんなしょうもない人格破綻者なら見捨てられても仕方ない
婆にそれ以上梃子摺っていたら主も助からなかったとおもう。
弟を先に逃がしたことも本当に良くやったよ。
ところで、勝手に創作認定する馬鹿は逝って良し。
何度も助けようとした、それだけで十分だろ
しかし文章が上手で、臨場感が溢れていても「創作だ!」
もうね…
┐(´д`)┌ヤレヤレ
特定怖いから詳しくは書かないけどさ。
これはむしろ主いい人すぎるわ……
私なら最初から置いて弟逃げてるよ
他職員がアホでどうにかしてでも助け出そうとかしてるんなら自分だけ逃げるのは心元無いよなぁ
自分もかなり若いけど、ドリフは知ってるよ。
ていうか、自分も熊本地震で避難所生活。津波がないのが不幸中の幸い。
これが嘘と思うのは、平和ボケだよ。
3.11被害者方に知り合いがいるが、ゴミ屋敷で普段からご近所さんに迷惑かけてるおじいさんがいたけど、津波がきた時、ご近所さん達は、おじいさんを呼び、みんなで引っ張って逃げようとしたけど、頑なにゴミ屋敷からしがみついて罵声浴びせまくってたらしいから、そこでみんな冷静になって、
普段から迷惑かけられてきたことがフラッシュバックして、見捨てて逃げたらしい。じいさんは亡くなった。
読んでてこの話を思い出した。
だから、創作とは思わない。
震災で起きた実話のひとつ。
でも、瞬間的に持って行かなきゃ!ってなるんだよ。
幸い内陸部で津波は来なかったけど、うちの場合は爺婆が止めたのに俺が強行して仏壇に取りに戻ったってパターンだった。
この時のことはいまだに爺婆にしつこく叱られる。思い出したように突然言い出すから流石にもう勘弁してほしい。
地獄の亡者を食べる。
たぶん、うちの家族をスレッド主の人に置き換えたとしても、たぶん同じことをしたのかもしれない。
人にそれを責める権利はないと思います。ただ、それをしてしまった人には本人でさえ気づかない暗い影が人生を通して付いて回りそう。スレッド主さんに道を照らす光が射し続けますように。
お前のせいで遺影や金が失くなった!と後で責め立てられるだけだろう
それどころかやって良かったんじゃないかな、この人のこの後の人生にとっては
自分が殺した訳じゃないよ、不幸な事故ってことで忘れて幸せに生きて欲しいな
こんな書けんぞ。
あの辺りの人は過去に何回か津波の被害にあってるし、津波の恐ろしさ知ってるはず。
今まさに家が津波に飲み込まれようって時に「家に戻って位牌取って来い」なんて喚く人間、助けなくて正解だよ。
まして幼少時に虐待された相手なら、序盤の仏間にうずくまってる辺りで見捨てたとしてもGJしたいわ。
最後に死んでこい。って言われたからそれは無理って手を離しただけのこと。
爺さんの所に行けてよかったな。アハハ!
最後も坊ちゃんのような終わり方で、なかなかの達人だと思いました。
そして当然のように俺も同じようにババア見捨てると思う。
残念ながらウチはやや高台だったからババアは今でも生きてるが。
着物着た過干渉の婆さんを低学年くらいの賢い孫が見捨てて逃げて婆さん死ぬシーンあったな
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