アパート

これは俺が九州に転勤した時の話です。

いつものように社宅に入れられるのかと思いきや、社宅がいっぱいだからっていうので、自分で探すことになった。

現地に行って探せばよかったのかな、面倒だったのでネットで調べて、店近くでリフォーム済みの2LDKがあって、不動産屋に写真撮って送ってもらったりもして、まあ良さげだったので、そこに決めた。

築20年のマンションに住宅設備も新品に変えてあり、和室だった部屋も洋室へリフォームしてあり、低価格でお得感があった。

とりあえず、家族には引っ越しの準備をしてもらい、仕事も休めなかったので俺だけ先に現地に向かった。車だったので13時間の運転はかなりしんどかった。

現地に到着し不動産屋よりカギを受け取り、部屋へ行った。

もう夕方の7時をまわっており、コンビニでメシとビールを買って、車から寝袋とスーツケースをおろして部屋に入った。

とりあえず、電気のブレーカーを上げて、水も開栓して荷物を洋間に運んだ。腹も減っており、アルコールも欲していたので、その洋間ですぐに飲み始めた。

たぶん、この部屋が元和室だったのだろうか、押入れの作りになっており、その押入れの上には天袋(てんぶくろ)もあったのね。天袋なんて築20年を感じさせた。

疲れているせいか酔うのが早かった。体を横にしてうつらうつらし始めた時、なんか耳鳴りがして、キーンって感じだった。

でもって体が動かなくなった。疲れているからだろうな、このまま寝ちゃおうかって思ったんだけど、目はぱっちりしちゃってるんだよね。さっきまで眠かったのに。

俺、まったくの0感なんで今まで、心霊現象に出くわしたことないんだけど、これが金縛りなのか?体を動かすこともできず、目線の先っていうとさっき話した天袋。

ふすまが少し開いており2センチくらいの隙間ができてるの。目閉じるか、その隙間を見るしかできない状態だった。

その隙間を見始めたんだけど、ギョッとした。誰かその隙間からこっちを見てる。隙間には確かにギョロギョロ動く目玉と、髪の毛が見えるのね。

で、その目玉もこっちを見ているの。あのスペースであの目の向き、首だけの人なのか霊だとしか思えなかった。

あの向きだと体は天袋下の押入れにないとおかしい。押入れの襖は外されたままなので、下に体がないことはわかる。

こりゃまずいと思ったけど、体が動かない。とそこで携帯がなった。でもって金縛りがとけた。電話に出たら赴任先の部下からだった。もう怖くなっちゃって、部屋から飛び出して電話をくれた部下を呼ぶことにした。

そいつすぐきてくれて、その天袋も調べてくれたの。そしたら、小さな桐の箱があり、箱のフタ部分にはお札みたいのが貼ってあり、ヒモが巻いてあった。

フタと箱の間からは髪の毛がはみだしていた。そんなもん見てしまったらなおさら怖くなり、その晩は部下の家に泊めてもらった(ちょっと情けなかったw)

次の日、管理会社と連絡をとり、すぐに来させたのね。

天袋の中の箱も管理会社のやつに見させたんだけど、昨晩は髪の毛みたいのがフタからはみだしていたのに、今ははみだしていない。

夜のうちに箱に戻ったってこと?目玉もこの箱からでてきたのか?そんな体験してしまってはその部屋に住めるわけないよね。ちろん解約することにした。

あの箱ってなんだったのか?ちなみに箱のあったマンションはF県K市K区にまだあります。箱がどうなったかはわかりません。

0感だった俺が唯一体験した心霊体験でした。