ナイフ

08/10/18
ある営業所で取引先とトラブって、その対処の応援として出張した際での出来事。(場所の明記は勘弁してください。大阪方面とだけ書いておきます)

営業所の人と協力して何とかトラブルの対処も終わり、その晩は営業所の人と慰労会兼お別れ会で酒を飲んで、大体9時半ごろ宿泊先にしていたホテルに戻った。

営業所の人からおおよその報告は言っているので、明日は朝一で本社に戻って経緯の報告をすればこの仕事も終わる。

明日は早くに出なければならないし、今までの疲れもあるので部屋に戻ったら速攻でシャワーを浴びて寝ることにした。で、シャワーを浴び終わった後、髪形を整え歯を磨くため洗面台へ。

たいてい洗面台の鏡は三面鏡じゃないですか。自分は子供の頃から両側の鏡を水平にして無限に同じ光景が映っているのを見るのが妙に好きだったんです。

その時も鏡を水平にして無限に同じ光景が映っているのを見ていた。その時、今から考えればなぜそんな事をしたのかはわからないのですが、髪形を整えるために使っていたクシを握って鏡の前で上下に振ってみたんです。

右にも左にも無限にクシが上下に振られている。それを何とはなしに見ていたのですが、あれっと思って左側の鏡を見てみた。

枚数はよく数えていなかったのですが、何枚か先に映っているのだけがどう見て目てもクシではないんです。そこに映っていたのは赤い血糊の着いたナイフ。

それが私の動かすクシと同じリズムで上下に動いている。見間違えかと思ったがそうではなかった。その何枚目かのもの以外はすべてクシなんです。

心臓はバクバク言っていたが、変に落ち着いていたのも事実で、右側を見てみると右側はすべてクシだった。

再び左側をみるとやっぱり何枚目かだけの一つだけが血糊の着いたナイフになっていて、そのナイフがこちらのクシと同じ動きをしている。そのナイフがさっきよりもこちらに近づいているような気もする。

その時点になって急に恐怖が襲ってきた。あわてて鏡を元に戻しベッドへ。

洗面所(というかユニットバス)から何かが出てきそうな恐怖にも襲われ、結局一睡もできず朝になった。当然朝は洗面所にも行かずに速攻でチェックアウト。

一睡もしていないせいでかなりやつれた顔をしてたと思う。上司は仕事の疲れだと思ったのか「御苦労さん」とねぎらってくれて、その日はもう帰っていいってことになった。

家に戻ってもあの光景が頭から離れず、しばらくは洗面台でまともに鏡も見れなかった。

でもまあ酔っていたし、疲れと酔いで妙な幻覚か何かを見ただけかもしれない、と自分に言い聞かせて、なんとか自分を納得させようとした。

その甲斐(?)あってか何かは知らないが、一カ月もたつと生活も日常に戻ったし、鏡も見れるようになった。

で大体3カ月も過ぎたころ、とあるホテルで殺人事件がというニュースが流れた。そのホテルはお察しの通り私の泊まっていたあのホテルだった。