13/04/09
新宿ルミネの雑踏で、Mさんを見た。
Mさんは大学時代の女の先輩である。びっくりしたが、東京に出張で来ると連絡して呑みにつきあってもらっていたので不思議はない。
嬉しくなって「Mさん!」と声をかける。返事はない。それどころかMさんはそのまま歩いていく。聞こえなかったのかな?とMさん、Mさん!と追いかけて呼び止めた。
前に回って見た相手は、背丈、顔、…やはりMさんである。だが、目だけは…。
「Mさん」とさらに面と向かって呼びかけても、相手はけげんそうにこちらを見るばかり。その目は明らかに見ず知らずの、不審な相手を見るモノだった。思わず
「…すいません、ヒトチガイでした」
とその場をごまかした。
どうしたんだろう、声をかけてはいけなかったんだろうか?釈然としないまま一日を過ごし、夕方に思い切ってMさんの携帯に電話してみた。
「お~K君、ひさしぶりやねw元気にしとった?」
いつものMさんが出た。
今日新宿であったことを話すと、やはり彼女は四国にいて忙しく、東京には来ていないという。他人の空似というが、世の中にはあんなにもよく似た人がいるものだな…苦笑していると、そういえば…とMさん。
「…そういえば、こないだこっちの近くの交差点でさ、キミそっくりな人がおってさ…びっくりしたわ」
Mさんは自分そっくりな人間を見たという。その”自分”は交差点の雑踏の中、ぼんやりした目で立ちつくしていたそうだ。
もちろん自分は四国なんかに行ってはいない。Mさんは声をかけようとしたが、ふと、かけてはいけないような気がしてそのまま通り過ぎたという。
あれはやはりMさんだった。
大学時代に思い切って告白し、フラれた相手だ、そのMさんを間違えるはずがない…。大学時代の友人Kから聞いた話。
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ホントだ。てっきり主本人かと思ったら他人から聞いた話。
何なんだ、コイツ。
おしまい
ただの倒置法になった典型例ですね
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