雨

04/05/25
2年前の話。

今もいる所なんですが、木造の小さいアパートの2階に住んでいて、部屋は8畳一間。中から見て玄関の左にトイレ、右に台所があるよくあるタイプの貧乏畳部屋。

その日はとても暑く、バイトもやめて真っ昼間から部屋でまったりしていたら玄関の方から「〇〇さん」と小さな女の声がした。

また宗教か…って思いながら「はぁい」って、だるそうに振りかえって玄関を見ると、台所のすぐ上の小窓からこっちを見てるやせた年配の女がいた。

「あのぉ~そこからのぞかないでもらえます?今玄関開け『うるさいので』…!」

おれがしゃべってる最中に割って「うるさい」と言われ、半分体を起こした状態で少し驚いて固まってしまった。

「下のヨシノ(少し偽名ね)ですが床がキシム音がうるさいので静かに歩いてください」

そう言うとこっちの返答も聞かずにさっさと下へおりて行った。もちろん小腹はたったが同時に少し違和感を感じてた。

そこで気になった事が2つ。おれは神経質で部屋の中を歩く時は隣人に気を使い常につま先歩き。下に音なんてまず聞こえっこない事。もう1つが下に人は住んでいない事。

何はともあれ怒りを押さえるため床を一蹴りかまし、その日はのんびり家で過ごした。

そして翌日。あまりの暑さに目がさめた。とりあえずテレビをつけた。

「〇〇さん」

…あの声だ。見ると小窓から、首から上だけを覗かせた「ヨシノ」がいた。落武者の生首を思わせる目覚めには最悪の絵ずらだった。

「音がうるさいので小さくしてください」

「音!?」

体をゆっくり起こすと、またすぐさま消えた。

テレビの音がうるさい?…疑問に思った。テレビをつけてたった1~2分。しかも深夜にテレビを見てたためにボリュームは限りなく小さい。

とどこからか音が聞こえる。うちじゃない。隣かと思ったが違う。外に出てみると下からテレビの大音量が聞こえる。「ヨシノ」の部屋からだった。え?

ドンドン

「すいませーん。こっちこそうるさいんですがー」

…出てこない。

自分でうるさくして…なぜ?もーなんだかわけわからんかった。部屋に戻り頭をかかえて悩みながら、また知らずの内に寝てしまった。。。

『うるさい!!!』

!!ビクッとオレは飛び起きた。

ぼうぜんとしてる中、下へおりる鉄階段のガンガンした音が響いてる。何が起きたのか理解も出来ず、ふと時計を見ると夜中の1時。

「なんだよぉ~今の音はぁ…?」

時間がたつにつれ昼間のあの声だと理解した。

「あのDQNいいかげんにしろよ…」

A型のおれは朝まで待って下の部屋に行った。そこでまず外側にまわって見たら洗濯物が干してあった。

「いつの間にか人が入ってたんだな…」

と疑問を一つ解決できた。雨がざんぶりにも関わらず、洗濯物を干しているのは少し気になったが。

ドンドンッ

「すいませんヨシノさん!上の〇〇ですけど!」…

ドンドンッ

「いるんだろーが!」

…反応がない。カギもしまってる。

とりあえず雨もチパチパ飛んでくるし周りにも迷惑なので撤退することにした。

そして雨がざんざん降る中、昨日とほぼ同時刻ドン!ガンガンガン何かが木製のドアにぶつかった音と急いでおりる階段の音。まさかと思い速攻で玄関に走った。

ガチャ

誰もいない。ただドアに濡れた紙切れが貼ってあるだけだった。えんぴつで書いた汚い走り書きの文字で

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい死ね死ね死ね死ね死ね死ね」

あら失礼な!そらもーブチギレですよ。
ドガドガドガッ

「おらぁ!出てこいよ!!直で言えよおめぇはよぉ!!」

その瞬間ドアが勢いよく開き、中から中年の男が飛出すなりおれに叫びながら襲いかかって来た。

「お前がぁーーうるさいからぁーー!!!」

おれは肩をつかまれ後ろにあったチャリンコに激しく押付けられた。すると周りの住人がやっと出て来てこの中年DQNを取り押えた。。

都合よく警察も登場し、ドラマさながらに雨の中DQNは消えて行った。おれも事情聴取で消えてった。隣人のねーちゃんが通報したらしい。

翌日、不動産屋がオレの部屋をチェックしに来た。下の部屋にもれる音を調べに来たらしい。


不「やっぱり音に問題ないなー。」

やっぱって?

俺「っていうかあの下のやつはどうしちゃったんですかね?」

不「あー、こっちにも10分に一回は苦情があって大変だったよ」

俺「え、なんで連絡くれなかったんすか?」

不「ん~…なんかね、物が壊れるぐらいの騒音で眠れないって。ありえないでしょ?でも連絡ぐらい入れるべきだったね。ごめんね。」

俺「そー言えば、ばぁさんは一緒に署にいってるんですか?てかあれ母親?」

と聞いた。

不「母親?〇〇さんは1人だよ。茨木から単身で出て来たみたいね」

ゾクッとした。

俺「…いやっ、てか下の人「ヨシノ」って人ですよね?」

不「?いや〇〇さんだけど…なんで?」

グワッっと全身に鳥肌が立ち耳鳴りがした。

この後もちろん王道の賃貸前歴を聞いたが、仲の良い知人からの紹介でもあったし、それはないと言う事でした。

以上。長々失礼でした。あんまり怖くなくてすまん。

ただ名前を聞いた時ほんとにきつかった。あれ以来小窓は閉めたまま。でもあんなはっきりくっきり見える物なのか?では