田舎道

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1/4:2005/07/19(火)01:18:51ID:Wl8KE6vC0
じゃあ、おつまみ程度に私の実体験を……

まだ誰にも話していないお話しです。少し長くなりますが、おつきあい下さい。

十数年前の話。私が6歳、兄が8歳の時だろうか。私たちは、お盆休みを利用して、両親と4人で父の実家に遊びに行った。

その日はとても晴れていて、気持ちが良い日だった。夜になっても雲一つなく、天の川が綺麗に見えた。最高の景色。

花火をして遊んだあと、イトコの兄ちゃんと姉ちゃん、兄と私の四人で、夜の散歩をすることになった。

こんな夜に外に出ることはあまりなかったため、探検気分で意気揚々だ。イトコの兄ちゃんと姉ちゃんはもう大きかったので、両親もにこやかに送り出してくれた。

父の実家はとても田舎で、小高い丘の中腹にある。家の裏は竹林になっており、その竹林の向こうには小さな川が流れている。

戦前はその川に沿って道があり、そこがこのあたりでは一番メインの道だったそうだ。しかし今はその道はなく、名残のように川に沿って家がぽつぽつと建っていた。

父の実家も含めて、川に沿って建っている家はどれも古い。少なくとも、戦前から建っている家ばかり。

父の実家は改装をしていたのでそうでもないが、他の家はどこもボロくて、どことなく廃墟っぽい家すらあった。


9:2/4:2005/07/19(火)01:19:15ID:Wl8KE6vC0
私たちは懐中電灯を手に、裏庭にある竹林を抜けて川沿いに出た。昔の道のなごりだろうか。川の土手は平らで、歩きやすくなっている。

イトコの提案で、土手をつたって上流へ向かうことにした。ぽつぽつ建っている古い家はどこも真っ暗で、明かりすら灯っていない。

そのことをイトコの兄ちゃんに言うと、彼は少しためらってから教えてくれた。

「この川沿いはねえ、僕たちにとって肝試しコースなんよ」

彼いわく、この川沿いに建っている家では、上流から順番に不可解なことが起こっているらしい。

一番上流にある家は、三十年ほど前に一家で心中した。二番目の家は、その十数年後に火事になって焼失した。家族五人のうち、二人が亡くなった。

三番目の家は、一人暮らししていた老人が孤独死した。発見されたのは二ヶ月も後のことだった(後ほど聞いた話では、発見したのは叔父と叔父の友人らしかった)

四番目の家は、金銭難で父親が自殺をし、その後一家離散した――

「……じゃあ、五番目の家は?」

私の兄が聞いた。イトコは、小さくため息をついた後に答えた。

「五番目の家は、うちなんよ」

ぞっとした。もし、イトコや叔父達に何かがあったら……

沈黙が、四人を包んだ。私は幼心にどう言っていいか分からず、黙ってイトコや兄たちに着いていった。

数分歩いて、「二番目の家」の跡地についた。暗くてよく見えなかったが、そこは更地になっていたようだった。ふと、私は気が付いた。

ふわふわとした光の玉が、ぼんやりと浮かんでいることに。ぎょっとして、目をこらした。光の玉は二、三度たて揺れした後にフッと消えた。

怖くなって「もう帰ろう」と言った。イトコ達や兄も、実は帰るタイミングを逃してここまで来ただけだった。

私の提案にすぐさま賛成してくれて、四人は早足で家に帰った。


10:3/4:2005/07/19(火)01:19:37ID:Wl8KE6vC0
お盆休みが終わって家に帰っても、私はその光の玉と、イトコの話が忘れられなかった。

もし、父の実家に何かがあったらと思うとゾクゾクして、眠れなくなる日もあった。しかし、時間が経つにつれてそれも風化した。

父の実家には、小学生の時は毎年二回は遊びに行っていたが、徐々に数を減らしていった。兄は大学生になってから家を出た。

そのころはもう二人とも、そこにはしばらく行っていない状態だった。

私が高校3年の夏、兄が帰省した。私と兄はとても仲が良い兄弟だったので、夕飯後、二人して好きだった映画を流しながらダベっていた。

映画が終わり、それでもしゃべり足りなくて色々と話した。きっかけは何だったか忘れたが、ふと話題が、あの夏の日のことになった。

「あの話、怖かったよね~。まだイトコ達になんも起こってないから良かったけど」

「ホンマに。未だにあの話は忘れられんわ」

うなずく兄に、私はもう言ってもいいかなと思って、兄に言うことにした。光の玉の話だ。

なぜか、そのことは誰にも言っちゃ駄目だと思いこみ、今まで誰にも言わずにいたのだった。

「そういえばさあ、私、あの日見ちゃったんよ」

わざとちゃかしながら、そう切り出す

「火の玉……というより、光の玉? みたいなやつ。しかも火事になったいう、あの家んトコで見たんだよね」

私の言葉を聞いて、兄はぎょっとした目で私を見た。

「俺も」「え?」

「俺も見た! 変な光の玉。ふよふよ浮いとった!」

今度は、私が驚く番だった。もしかしたら気のせいだと思っていたあの光の玉を、兄も見ていたのだ。

ゾーっとし、暗黙の了解でその話題はそこでとぎれた。その日私は眠れなかった。


11:4/4:2005/07/19(火)01:20:35ID:Wl8KE6vC0
その数ヶ月後、兄が死んだ。

とある事故だった。書いてしまうと身バレする可能性があるのでやめておく。ちょっと普通では考えられない、特殊な事故だった。ニュースにもなった。

次の年、父方の祖父が死に、後を追うように祖母と叔父が亡くなった。三人とも、同じ病気でだった(もちろん、感染症や伝染病ではありません)

あまり聞いたことのない病名で、お医者さんも変な偶然に首をひねっていたそうだ。

もともと母親がいないイトコの家は、イトコ兄弟だけになってしまった。

叔父の通夜の前の夜、叔父の遺体が収まった棺桶の隣で、イトコの兄ちゃんと姉ちゃん、三人で飲んだ。二人とも、この家を出るのだと言った。

「やっぱり……、怖いから。信じてる訳じゃないんやけど……」

――あまりお酒が強くない私は、酒をさまそうと二人に断って外に出た。ぼんやりと庭を散歩し、裏庭に行く。さらさらと、川が流れる音がする。

あのころ、うっそうと茂っていた竹林は、全て切られてなくなっていた。荒れ地となったその場所に時間の流れを感じながら、ふと振り返る。

イトコの家の目の前に、あのころ見たのと同じような光の玉がふよふよと浮いていた。

なんとなく思う。私は、もうしばらくしたら死ぬかもしれない。それも、兄と同じような事故で……
そう考えると、怖くてたまりません……

長文失礼しました。


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