廃墟

138 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/03/25 10:46
私が小学校4年生のときの話です。私の家の2けん隣は私が物心ついた時から
空き家で、塀には板を打ち付けてあって外からは塀を乗り越えない限り、
入れないようになっていました。空き家といっても、一家心中とかそんな
おどろおどろしいことがあったわけではなく、その家の
商売がうまくいかず、そこの家族全員夜逃げをしたとのことでした。
塀が高いので家の様子はよく分からないし、窓という窓に板が打ち付けられている
いくらいわくつきの家ではないと分かっていても不気味で、私は4年生のその日まで中に入ってみたいなんて
思ったこともありませんでした。
ところがある日、友達2人と家の外で遊んでいたら、一人がその空き家に
入ってみようと提案しました。



139 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/03/25 11:07
3人もいるし、怖くないかなとおもって初めて塀を乗り越えて
中に入ってみたのです。
玄関は板が打ち付けられているから入れないし、家の脇を通って
勝手口のほうにいってみようということになりました。
その通路には壊れた壁掛け時計が落ちていて、そこら辺にガラスの破片
が散らばっていました。古めかしい字体の文字盤が割れたガラスから
直接のぞいていて、3人で、ふるいとけいだねー、とかいいながら
ちょっと見ていました。
やがて勝手口にたどりついた私たちでしたが、誰も扉を開けられるなんて
思っていませんでした。でもすでに私たちは冒険気分を味わって
いたので、これで帰っても満足だったのです。でも一応、あけてみる
努力はしてみよう、ということになりました。
友達の一人がノブに手をかけると、扉はひらいたのです。あっけないほどに。
私は怖くて中を見ることができません。中をのぞきこんでいる
友達は真っ暗だよー、といっていましたが、急に、
誰かいるよ。といいました。



141 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/03/25 11:15
私ともう一人の友達は、え?本と?といって、その友達の脇から
部屋の中をうかがいました。
部屋のなかは書類がさんらんしていて、台風にでもあったみたいなありさまです。
ドアのちかくには固まった古いインク壺がありました。
で、5メートルくらい離れた先に、本当にだれかいるのです。
部屋の中で、机に向かって一心不乱に何かを書き綴っているひとが。
蛍光灯のデスクライトだけをつけて、白い開襟シャツをきて、
丸くて太い黒ぶちの、ロイドめがねをかけているひとが。



142 :あなたのうしろに名無しさんが・・・:04/03/25 11:40
不思議なことにその人は私たちにまったく気づかない様子でした。
小学生3人がぎゃあぎゃあさわいでいるのに、顔を上げてこちらを
見ようともしないのです。ただひたすら、そのひとは、机に向かって
何かを書きつづっているだけなのです。

私たちは、その人に悪いとおもって、その場をたちさることにしました。
蛍光灯の明かりに照らされた、そのひとのめがねと、坊主頭、ぱりっとした
感じの開襟シャツは子供のわたしにも何か不自然な感じがしました。
まるで、昔の軍人さんみたいだ。わたしはそうおもいました。

家に帰って、母にあの空き家にはいったよー、だれかいたよー、
といいましたが、母はとりあってくれませんでした。
私も誰かが勝手にはいってたんだろうと、それ以上深く考えませんでした。

でも、たまにふしぎになるのです。電気など、とっくの昔にとまっている
はずのその空き家でどうして蛍光灯のデスクライトなんか使えたのかと。
それと、そのひと。まるで、戦争映画からぬけだしてきたようないでたち
はいまでも理解できません。

でも一人わたしはそのひとにそっくりなひとをしっているのです。
会ったことはありませんが、おばあちゃんの部屋には
ロイド眼鏡で坊主頭、白い開襟シャツでわらってるひとの写真がかざって
ありました。
えっこちゃん、このひとえっこちゃんの伯父さんやで、しんちゃんやで、
戦争で、マリアナ海溝で、敵の砲弾にあたって戦死したんやで。

その空き家で見たその人は、写真の中の私の伯父さんにそっくりでした。


引用元:https://hobby5.5ch.net/test/read.cgi/occult/1077810867