
19/02/19
今から25年くらい前の話だ。
残業を終えて路線バス経由で自宅近くまで移動、私鉄路線をまたぐ長大なスロープ式陸橋をゆっくり歩いて越えて行く。
最頂部に立つと行く手の夜の街が見渡せた。前方頭上に巨大なレンズ雲が浮かんでいた。
時刻は10時過ぎ、季節は秋口だったと思う。
夜歩きする人間なら知っているだろうが、たまにこんな夜がある。真夜中近いのに空にはかすかに青味が残り、雲がはっきりと見える夜。
陸橋の上で立ち止まり、しばらく夜空を見上げているうちに、レンズ雲の底面を薄い光の染みのようなものがゆっくり移動しているのに気付いた。
光の染みはレンズ雲の外縁と平行に旋回移動していた。誰かがサーチライトで照らしているのか。だが地上から伸びる光芒は確認できない。
この巨大なレンズ雲まで光を届かせる大型のライトと駆動装置。たまたまその真上に雲が移動してきて滞空している?
見つめているうちに光の染みがもう一つ存在しているのを発見した。最初からいたのか途中で増えたのかわからない。
追いかけ合う2つのスポットライトに見とれているうち目の錯覚かレンズ雲自体が回転をはじめたように見え出した。
UFOの母船とか出現しそうで急に怖くなり、陸橋を早足で降りて足元だけ見ながら逃げるように帰宅した。
次の夜、同じものを見た。この時はなぜか恐怖よりも嫌な気分の方が先に立ち、勝手にやってろよと思いながら俯いて家路を急いだ。
以後同様のものを見ることはなかった。
話は以上だ。小さな後日談もあるけれど、長くなったのでやめておきます。
空を眺めることは貧乏人に許された高尚な楽しみのひとつだと思う。習慣化しておくと結構いろんなものを目にする。
これケムトレイルじゃんとか、空一面に敷き詰められたバルンガとか。バルンガの話はいつか聞いてもらいたい。
オカルト風味はほとんどないけど、自分にとっては結構印象的な出来事だったんだ。
じゃ、またな。
投稿者:空蝉様
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