車、スクラップ

557:本当にあった怖い名無し:2006/05/17(水) 01:34:34 ID:srinVp3R0
俺が高校のころ、よくツルんでた所謂不良グループみたいなのがあった。 
半分族で、半分仲良しグループ、という感じ。 
そのメンバーのうちの1人の兄貴のケンジさんって人がバリバリの893。 
といっても俺らには優しかったし、俺らもその人を親しみを込めて 
「ケンジさん」って呼ばしてもらってた。 
ケンジさんは、あっちの世界の色々な話を聞かせてくれた。 
その中の一つ。 
彼がまだ準構だった頃の仕事と言えば、兄貴分たちのお使いばっかりだったそうだ。 
やれタバコ、やれビール、やれマッサージ。族に居た頃は使う方だったケンジさんは、 
それはもうストレスが溜まって仕方なかったそうな。 
元々別に893になりたかったわけじゃないし、(半分無理矢理ならされた) 
「辞めようかな…」 
なんて思ってたそんなある日。 



558:本当にあった怖い名無し:2006/05/17(水) 01:36:23 ID:srinVp3R0
「ケンジィ~、頼まれてくれっかぁ~?」 
いつものように兄貴分がパシろうとしてきた。 
断るという選択肢は無いので、内容も聞かずに二つ返事で承諾したらしい。 
「はい、じゃあこれ。」 
車のキーを渡してきた兄貴分。そんな事は初めてだった。 
「何すか?これ。」 
ケンジさんがそう聞くと、兄貴分がニタニタ笑いながら 
「お前の初仕事。」 
と言ってきた。とにかくその車を、20キロ離れた山奥にある 
産廃処理場(不法)に持っていけ、との事。 
ケンジさんは訳も分からないままキーを受け取り、古めのマークⅡを運転して 
処理場に行った。 
すると、そこで数人の男たちが待ち構えていた。 
「おう、○○(兄貴分)のコレだべ?鍵渡せ、鍵」 
男のうちの1人がそう言った。ケンジさんは何のことか分からず、 
適当に相槌を打って(よく分からない時は、受け流すのがこの世界の鉄則だそう) 
キーを渡した。男は車に乗り込むと、そのまま鉄板と鉄板に挟まれたスペースに車を 
動かした。男は車を降りると、「おーい、ええぞ。」と、いつの間にかそのスペースの 
横にある操作室みたいな所に移動していた別の男に声をかけた。 



559:本当にあった怖い名無し:2006/05/17(水) 01:37:47 ID:srinVp3R0
「ガガガガッガッガッガガガァァンン」 
車を挟んでいた鉄板が、突然動き出し、そのまま車をペシャンコにしてしまった。 

-----ケンジさんはここまで離し終えると、タバコに火をつけた。 
「それ、ただ単に中古車処理頼まれただけなんじゃないの?」 
一緒に聞いていた、ケンジさんの弟が言った。 
確かに、別にわざわざ俺たちに話すような内容でもない。 
するとケンジさんは笑いながら言った。 
「いや、車が潰れる凄い音の中に、女の悲鳴が混じってた。間違いなくな。 
しかも、鉄板と鉄板がイケるとこまで接近した瞬間、ブヂン!て凄い音がしたんだ。 
あれは鉄が潰れる音じゃねえ。」 
俺とケンジ弟は少し嫌な気分になった。ケンジさんは続けた。 
「そのオッサンたちにも、兄貴にも何も聞かなかったけどな。 
まあ、俺も最初から何となく分かってたから、トランクは見なかった。」 
ケンジさんは笑っていた。俺とケンジ弟は、凄く嫌な気分になった。 


引用元:http://hobby7.2ch.net/test/read.cgi/occult/1147328309/