山道

18/12/05
  高校へ入学するほんの僅かの期間、予定者が自己紹介も兼ねて里山散策する事になりました。

その里山地区から男女各1名の二人、港町から女子一人そして私の計四人の顔ぶれで其れ程深く無い散歩が始まりました。

  いくら大人ぶっても16歳になる前のことですから話題性に欠け、そろそろ引返すかという時のことです。

蛇行する山道の直ぐ脇に英国チューダー調の外壁を思わせる古い屋敷、壁は白で剥き出しの梁が黒檀の黒、大正時代のモダニズムを思わせる古い作りの家が現れました。

が、女の子の一人が

「変よね! 来る時には見なかったのに何故在るのかな?」

「いやいや、話に夢中で気が付かなかっただけだよ。」

「僕は見たけど、見なかった者もいる⁉︎」

其処で折角だから訪ねて見てもいいのではないかなって事で、女の子の一人が入り口から中へと入りました。

薄暗い土間の一角に声掛けて住人を呼べども返事は無い、ただ人の気配はする…帰ろうとした矢先、壮年期の男性らしき者が背後の土間からヒョコッと顔を出して来た。

入り込んだ彼女も何やら話し込み始めたけども、この内容については私は知らない。

ただ後々に伺えば、彼女は三十路半ばまでの命で其れまでに幸せな人生を歩むという事でした。

が、私が不気味で成らなかったのは、土間から彼女を垣間見た壮年期の男性の面立ちが尋常ではなく、どうひいき目に見ても人では無かったと、動物霊が憑依した様な面相で在ったという事です。

  それから十何年も経ちその事を忘れてしまった頃、私の近所に新築し引っ越した彼女はご主人と公務員として出世コースを歩み始めましたが三十路半にして他界、確かに其れまではご主人共幸せそうでした。

そして彼女が亡くなった時にふと、あの一瞬の出来事が浮かんで来ました。

あの森の中に在った屋敷はその後、その地区の何処を探しても見つかりませんでした。

そしてふと思い出した事、小学校の時に捕まったタヌキが子供達に披露され野生の為直ぐ死んでしまった時、その傍で泣きじゃくっていたのが彼女ではなかったのか。見世物にされ哀れとか言っていた女の子。

あの屋敷の一角から出て来た男…何処となく似てる様な、もう遠い昔の事となりましたけども。


投稿者:山幸彦様