狂人

08/07/30
先日学生の頃からの友人に会ったときのこと。数年ぶりに彼女が出来たという。 
彼女は会社の後輩で、何年も仕事一緒に仕事をしていたのに 
ほとんど会話したことがなかったが、打ち上げの飲み会で意気投合したのだとか。 
友人は無類の活字好きで、彼女とも本の話で盛り上がった。 

友人「じゃあさ、○○著の××って読んだことある?」 
彼女「それは読んだことないです。○○の△△はすごくよかったです」 
友人「△△読んだんだ!○○なら××が最高傑作だよ。」 
友人は彼女にその本を貸すことを約束した。 

○○はロシアかどこかの文豪で、△△が代表作。(自分が無知なので失念) 
××ってのは友人の十数年来の愛読書で、擦り切れるほど読んでいるらしい。 
友人はやや潔癖で神経質なところがあり、彼女に貸すにはあまりにも酷い状態だったので、 
新しい物を買って彼女に渡した。 

本を渡した翌週の月曜日、彼女が友人のところにやってきて興奮気味に話し始めた。 
土曜日の朝から食事も忘れて読みふけっていたらしい。日曜日もそんな感じで、 
分厚い本の4分の3ぐらいまで読んでしまったという。 
その週末、本を返してもらうのを口実にデートに誘い、交際することになった。 
本の感想は友人が期待した通りで、彼女とは価値観が合うと思ったという。 

自分「で、その本面白いの?大して興味はないけどさ・・・」 
友人「これだけど読んでみるか?まあ、お前は絶対読まないだろうけど」 
友人が鞄から取り出した分厚い本には几帳面にブックカバーが掛けられていたが、 
さらに可愛らしい手提げ袋に入っていた。彼女が返したときに入れていたものらしい。 

案の定、自分は一生読むことのないだろう小難しい本だった。 
彼女のノロケ話をBGMに、その本をパラパラとめくっていると、本の間から何かが落ちた。 
新品だと言っていたその本のページには大きな油染み。落ちたのはスナック菓子のカケラだった。 
他のページにも挟まっている。サキイカのカスと思われる糸状のものも出てきた。 
そして最後のページにはしおり代わりに使っていたと思われるティッシュペーパー。 
しかも何かを拭いた形跡がある。その本を閉じて自分は黙って友人に返した。 

あのとき、サキイカやティッシュペーパーはこっそり抜いて渡すべきだったか。 
それともその場で「なんだこれー」ぐらいおちゃらけてみたほうがよかったのか。 
結婚も考えているという幸せそうな友人の顔を見るたびに、モヤモヤする。 


引用元:https://hobby11.5ch.net/test/read.cgi/occult/1216808657/