山道

18/11/06
  そろそろ晩秋の風情が出て来ましたね。

 香川県からの馴染みの山行となれば剣山系とか石鎚山系になりますが、もう二十年も前の事で剣山から丸石山へ辿り、巻道を奥祖谷へと下山していた時の事です。

  渓谷を脇に見て細道を歩いていると何やら獣の気配がするのです。「果て⁉︎  イノシシかな!」なんて思って仕舞いましたが、通り過ぎる足元の生えた木々が蠢きました。

ギョロ!っと刺す様に視詰める目が草生す中から見えたかと思うと半身を此方に向け、晒した其の正体は白が滲む様に汚れた色の獣、白いイノシシでした。童が動転し飛び跳ねる様に驚くのと同じで、その時の私の驚きは表現出来ないものでした。

  この下山道は突き進むと「祖谷のかずら橋」に出ますが兎に角、小走りに走って着いたものですから息を切らして倒れ込む始末で、脳裏に遺ったあの一瞬が忘れられませんでした。

驚きは隠せませんが、何よりもその老いた白いイノシシの表情が例え様も無く、人間の老人の面立ちに近かったという事でした。

後々に義理の兄がその現場に行って確認した処では、間違いなく白い動物の毛が有ったという事ですが、更に言い伝えによると、白い獣を見た者の家はその後絶える、滅ぶという事、家屋敷も人も何処かに絶えて終い、そして祟りも消える…というものでした。

あれからもう二十年も経ちますが、私自身両親は他界、故あって家は絶え、独り都会の片隅で生きています。義理の兄から聞いた見てはいけない山の主との確執とは此れだったのかと思っています。


投稿者:山幸彦様