生物

10/04/13

しょぼいけど子供の頃の話し。 


親父が山菜好きで、よく実家の裏山にワラビやゼンマイを取りに行っていた。 

その時はたまたま親父に来客があって、一緒に取りに行く予定がキャンセルになった。 

でもきっと食べたいだろうと思って、一人でいつもの裏山に行った。 

渓流みたいな細い流れに沿って登っていく山道で、ゼンマイはそこらにある。 

ワラビはその先の明るく開けた崖のあたりにあった。ワラビの生えている場所について 

なるべく太くて美味しそうなのを選んで摘み取っていた。 


崖の上からは実家と周囲の何件か、それに少し離れたところにある古い民宿とその奥に 

釣り堀が見える。深緑の頃は緑が綺麗で、良い眺めの場所だった。両手で持ちきれない 

ほどにワラビが採れたので一休みしようと顔を上げると、釣り堀のところに何かが見えた。 

「……?」 緑色のいびつで丸い感じの何かが、釣り堀の水面から半分くらい出ていた。 

けっこうでかい。遠目だから正確じゃないが、3~5mくらいありそうな大きな緑のジャガイモ 

みたいだった。「なんだあれ……」そう思った途端それがこちらを振り返った。 


真っ黒な目玉が一つ付いていた。顔といっていいのか、半分出ている部分と同じくらい 

大きな眼だった。眼が合った気がして思わず手の力が抜けてしまった。せっかく摘んだ 

ワラビは全部バラバラと落ちてしまった。 

見てはいけない物を見たような気がして、それからすぐに家に帰った。崖下に落ちずに 

済んだ少しのワラビを拾って、ゼンマイも採らずに焦って帰った。ただ、不思議とあまり恐い 

感じはせずに、何か叱られたような気分だった。 


親父には見たものをそのまま話したが、面白い物見たなーで笑い飛ばされた。ちょっとしか 

採れなかったワラビでも喜んでくれた。夕飯の時に婆ちゃんにその話をすると、山神さんが 

採りすぎたから置いてけって出てきたんだろう、と言った。 


これで終わり。恐くなくてスマネェ。 



引用元:http://anchorage.2ch.net/test/read.cgi/occult/1269425456/