包丁

16/08/10
昔、俺が友人に頼まれて電話占いをしていた頃の話。 
その友人は、電話占いの広告を出していて、何人かの占い師を抱えていた。 
『出来るときだけでいいから、手伝って』と頼まれ、何回かやったことがある。 
まずは友人が電話をしてきて、『依頼があったけどこれからの時間出来るか?』と聞いてくる。 
できるときは相手の電話番号を聞いて、コレクトコールでこちらから電話をかける。 
最初に料金設定の説明をして、最後に『○○分だったので○○円を振り込んで下さい』と伝える。 
依頼がくるのは、だいたい夜の十時すぎが多かった。 
職場での恋愛の話から、ディープな三角関係など、いろいろな依頼があった。 

俺が電話鑑定をやめるきっかけになった依頼がある。 
それは、二十代の若い女性。 
つきあっている彼が浮気をやめられるかどうかという悩みだった。 
彼女は彼をとても愛しているのだが、彼はモテ男で複数の女性とつきあっているらしい。 
『お前が一番好き』と言ってくれてはいるが、彼女はどうしても、他の女がいるのが許せない。 
「いつかあたし、彼を刺すかも知れない。 
アハハハハハハ!」本気か冗談かわからない物騒な言葉を言いながら、高笑いしていた。 
俺は「どうもその男性の浮気性は今後も続きそうだ」と伝えた。 
そして、「一年後には別の男性と縁があるから、別れた方が良いのでは」と言った。 
彼女は、どうしても彼と結婚したいようだったので、「結婚しても女癖は直らない」とハッキリ伝え、もう別れて新しい恋の準備をすることを勧めた。 
あまり納得しない感じで後味が悪かったが、料金を伝え電話を切った。 

電話を切ったあと、執念深い彼女の性格が気になった。 

それから数か月後、何気なく全国ニュースを見ていたら、 
《二十八歳の女性が交際男性を刺殺》とのニュースが。 

いつもなら、よくあるニュースのひとつとしてあまり気にもとめないのだが、 
そのときは胸がキューッとなる感じがあったのを覚えている。 
あの時の彼女の言葉が思い出されたからだ。 

「いつかあたし、彼を刺すかも知れない。アハハハハハハ!」 

彼女の名前も顔も、住んでいる場所さえ知らないのだから、まったくの人違いかも知れない。 
だが、その時聞いた生年月日からするとぴったり二十八歳…… 

そのことがあって、友人に連絡して電話占いを辞めることにした。 
あの事件の犯人が、彼女でないことを祈るばかりだ…… 


引用元:https://www.logsoku.com/r/2ch.sc/occult/1470567716/