母親
09/01/24
中学からの親友に聞いた話。

彼女の出生時、大量出血などで母親は死亡。一度も我が子を抱きしめる事なく逝ったそうだ。

父親は無口で優しかったが出張の多い人で、彼女は祖母に育てられたらしい。

彼女は昔からものすごく人に気を使い、とても明るい性格だった。

36で遅くなったが結婚し、出産。

無事に子供は生まれたものの、その頃から彼女は壊れていった。どうしても我が子を愛せないらしい。

ある日心配で見に行くと、泣き叫び汚物臭のする赤子。彼女はそのかたわらで、耳を塞いで震えていた。

私に子供はいなかったが、とにかく赤ちゃんにミルクを飲ませ、オムツを換えてやり、当時出張中だった彼女の旦那に、すぐ戻るように電話を入れた。

急いでも帰りは夜になると言うので、それまでいる事に。

子供のように泣きじゃくる彼女は、

「どうやっても可愛いと思えない」

「泣かれると殺したくなる」

と病的な発言。育児ノイローゼだったんだと思う。

夜には旦那も戻り、育児協力と彼女を診療内科に連れて行く事を約束させ、私はその場を後にした。

その翌日の仕事帰り、彼女の事が気になって仕方なかった私は、すぐに彼女の家に向かった。

胸をしめつけられながら開けた玄関の中に立っていたのは、晴れやかな顔をした彼女だった。

そして腕には、ぐっすり眠る赤ちゃんが…

「昨日はごめんね~」

とあっけらかんとした彼女にあっけをとられ、私はその場に座り込んでしまった。で、落ち着いたところで話を聞いてみて驚いた。

昨夜泣き疲れて、子は旦那に任せ眠ってしまったらしい。

そして夜中、少し息苦しく目を覚ますと、若い女の人が涙を浮かべ彼女を抱きしめていたそうだ。

あまりの事に固まっていると、

「これが母親の愛情よ、覚えおきなさい…」

そして、

「抱きしめてあげられなくてごめんね」

と消えてしまったそうだ。

…それは写真でしか見た事がない、彼女の母の霊だったらしい。

それから彼女は居間へ行き、改めて我が子を抱きしめてみると、「今まで感じた事のない、愛しさと涙が溢れだした」と言っていた。

『愛せなかった』のではなく、『愛し方を知らなかった』のだと思う。

それを、一度も彼女を抱けなかった母が教えにきたのだと思った。

今では彼女は立派な親バカ。

ただひとつ、母親の霊は自分より一回り以上若かった事が悔しいと笑っていた。


引用元:http://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1434970204/