03/06/11
俺の親父の話を書きます。親父はタクシーの運転手をしています。
夜中2時を過ぎたくらいだったそうです。一人の男性(40代くらい)が病院から乗ってきました。行き先は違う近所の病院でした。
身なりはきちんとした黒の背広姿でおかしな様子もありませんでした。車中、男性はカバンからA4サイズの書類を取り出し一枚一枚をていねいに見ていました。
目的の病院につくと男性は、
「運転手さん悪いが少しの時間だけ待っててもらいたい」
「すぐ片付く用事なので、それに、この後違う病院にも行かないといけないから」
と言いました。
親父は
「いいですよ。」
と。承諾しましたが、かわりに、無賃乗車を防ぐため荷物を置いていってもらうことをすすめ、男性もそのとおりにカバンにあった封筒だけを取り出し、あとの荷物はすべて置いて車を降りていきました。
男性が降りたあと、親父は(すごくいけないことなのですが)男性の見ていた書類が気になって好奇心で見てしまったのです。
書類は何かの契約書みたいなものだったのですが、気になったのが名前の横に判子ではなく拇印が押してあったことでした。
でも、車中が暗いのと男性がほんとうにすぐに帰ってきたので細かい部分までは見ることはできなかったそうです。
男性が急いで病院から出てくるのが見えたのでタクシーのドアを開けました。そのとき、男性の後ろを女性が追ってくるのが見えたのです。
親父はその女性にただならぬ雰囲気を感じました。
男性は、
「女性は無視して、すぐに車を出してください」
と意外に冷静は口調で言いました。
親父は、言われたとおりというより反射的にすぐに車を出し、バックミラーも何か怖くて確認できなかったそうです。
その後、男性は小さな声で
「すいません」
と一言いったきり、ずっと無言のままで、また違う病院の前で降ろし、そそくさと病院の中に入っていったそうです。
男性を降ろした後、すぐに会社から無線が入りました、
「至急、家に連絡をほしいと家族から電話があった。」
という伝言でした。
家に連絡するまでもなく、親父は妻(俺の母親)が死んだことをその瞬間悟ったそうです。
というのは、俺の母親は持病の心臓病をわずらい、もう長く持たないと医者に宣告されていました。
親父はこの話を10年近く経ってようやく話してくれました。小さかった俺にショックを与えないように配慮してくれたんだと俺は思っています。
当時は自分の愛する人の死のショックでその男性について深く考えることができなかったそうですが、あの男性は何者なのか?
あの書類の中に母親の名前はなかったのだろうか?追いかけてきた女性は?あの「すいません」の意味は?
親父は今になって考えてしまうそうです。
俺も俺で、母親の葬式の記憶の中にある、母親の亡骸の親指がかすかに赤かったことを親父には言えないままでいます。
10年後くらいに話そうと思っています。
引用元:http://syarecowa.moo.jp/41/063.htm
コメント
コメント一覧
何でやねん!
でも、死神にしてはカバンだとか封筒だとか契約書だとか拇印だとか、小道具が妙に現実的で、実は単なる思い込みに過ぎず、その男は普通の人間だったようにも感じられます。父上は、妻の容体が良くない事はもちろん承知していて、その不安からちょっと神経過敏になっており、病院からの深夜の客という事情も手伝って不吉な感じを受けただけではないでしょうか?
その仕返しで自分の情報も10年寝かせる無意味な報復
死にそうな患者が寝ているうちに拇印で契約させて
生命維持装置のスイッチを切ってきた臓器売買業者の話かと思ったわ
文章だって普通に読みやすい文章だし、あ、これは死神のお話なんだと読めば分かるし、親父に10年後に聞かせようとしてる意図を勝手に否定したり、君らは物を読むという行為を批評行為と勘違いしてないか?
あっ・・・
やりなおして
ホント死神業界はマチマチだなw
…ドジっ子な死神だよなぁ
・・・んん?
福の神(見たんかあ、お前見てもうたんかあ!)
ここ、蛇足ぅ!
ここのまとめのコメ欄は文句ばっか
>親父に10年後に聞かせようとしてる意図
って何なの?まさか5の言うように報復じゃないよね、良かったら教えて下さい
コメ欄を批評している人がいると聞いて
読めるは読めるけど、はっきり下手と言い切れる文章だよね
批評どうの言ってる事より、この文章を普通と言える感覚がヤバイと思う
ボロクソに叩かれてたので反論した
…くらいしか、あれだけ肯定的に受け止める理由がないわな。この文章は
川端康成の雪国の出だし、国境を抜けるとって「こっきょう」か「くにざかい」か
谷崎潤一郎の細雪の最後は、下痢はとうとうその日も止まらず、汽車に乗ってからもまだ続いていた
名文名作だって解釈論争が起きるのに、こんな短文で意味が判るように書かれてれば充分だよ
母は入院病棟で時々、スーツ姿のビジネスマン風の人が書類を手にきょろきょろ、うろうろしているのを見かけた。その人が近づいた患者はすぐに亡くなる。母は自身が入院中、そのビジネスマンが来たので、もう助からないことを悟る。母は手術中に亡くなった、という話。
1.瀕死の患者の拇印に、契約書の価値があると思う
2.臓器売買業者w
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