夜の山
15/06/08
すこし前の話ですが、男3人女1人のメンバーで山にドライブに行きました。

N県のS湖辺りを観光して、昼過ぎ2時頃には帰路につきました。ところが、山一つ越えてG県に入ったとたん、大雨に遭遇しました。

かなり低いところで雷も発生し、カッ!!と光るとまわり一面真っ白になり、ゴォーーーーーーンッ!!と、車の中でも振動がビリビリ伝わる悪天候です。

そのせいで、渋滞がおこり、2時間、3時間たっても山の中でした。あまりにも進まないので、一旦退避レーンに停車し、休憩しながら対策を練りました。

その時はまだ知らなかったのですが、平地に近いほうでも大雨で、高速道路が通行止めになり、全車両が下道に降ろされ、渋滞の列は数十キロになっていたそうです。

オレ:S(運転手:印刷業)、

Y山(友人:営業)、

K子(友人:飲食店)、

K次(友人:大工)というメンバーです。
※K子とK次は姉弟ではありません。

Y山「やばいねー、どうする?抜け道でもあるか?」

オレ「前に行ったことがある。とんでもない酷道やぞ。」

K子「明日も休みだから問題ないけど…」

K次「おれも問題ないけど、このノロノロ運転は疲れますね。」

結局、危険だが酷道を行く事にした。

ナビを検索し、地図を見て、記憶を呼び戻し、ソロソロと渋滞の列を離れたのですが、2~3台ほど後続が付いて来てしまいました。

オレ「いや、おまえらの考えているような抜け道じゃないよwww!」

Y山「あららーwww」

オレ「リスク覚悟で行く道だから、知らんぞwww」

最初の峠道、うねうねと曲がりくねった道を越えるころに2台脱落しました。

一台だけ軽自動車だけが、たぶん離されたらまずいと思っているのでしょう、やけにベタ付けでどこまでもついてきました。

オレ「…ライトが眩しいんだよwww!もう少し離れろよーw!」

しばらくはがまんしていましたが、危険な酷道で頭文字Dをやっているわけにはいきません。ちょっと膨らんだカーブで車を停めて、追い抜かさせました。

後ろの車はちょっと戸惑った感じでしたが、こちらの意図に気がついて先に走って行きました。

今思い出せば、この辺りのみんなの表情というか発言も微妙に変だった気がします。

とにかく、自分の速度で発進してすぐに、先に行かせた軽車両が跡形もないのに違和感を感じましたが、つづら折の曲がりくねった道ですから、あっという間に見えなくなったのだと思っていたんです。

幸いにして雨は小雨になりましたが、うっすらと霧がかってきました。そしてここで重大な問題が発生します。

K子「Sさん、この先どっかにトイレない?」

オレ「…お、おう…」

K次「実は、オレもっす…」

Y山「お、おう…」トイレ問題です。

うーむ、記憶を必死にたぐり寄せ、この先、確か駐車場のようなちょっとした広場に簡易式のトイレがあったと思い出しました。

少しがまんしてくれよと、トイレにたどり着き、K子とK次はライトに照らされ簡易トイレにイソイソと行き、オレとY山は車の中でタバコをふかしました。

Y山「いやぁ、大変なドライブになったねーw」

オレ「まさか雨の酷道を走ることになるとは思わなかったw」

Y山「馬刺し美味かったねーw」

オレ「うまだけに…」

Y山・オレ「wwwwwwww!!」

ガチャッ、バーンッ!!K子とK次があわてて乗り込んできました。

オレ「ちょっwドアはw静かに閉めれwww!!」

K子「Sさんここやばい、はやく出よう!」

Y山「トイレに幽霊出た?www」

K次「Sさん、あそこ!」

トイレと対角の角を指す。ん?車?

K子「ここ、お墓の駐車場よ、はやく行こ!!」

二人の剣幕におされて車を出した。

Y山「なにがあったん?」

2~3分もしないうちにたずねる。

K次「あの車、誰も乗っていません。」

オレ「中で寝ているだけじゃ…」

K次「Sさんの方からは見えなかったかもしれないけど、ドア開いてました。」

ふむ?K次とK子がアイコンタクトする。

K子「Sさんの方から死角になってた向こう側ね、警察のテープみたいなものがぐるぐる貼ってあって…」

Y山「規制線か?」

K次「そう、それ!…そんで、お花がいっぱい添えられてたんす。」

オレ「え~~~っ!?」

と言ったところで、全員が「アッ!」と叫んだ。通行止めの立て看板が行く手をふさぐ。

オレ「あちゃーっ!」

行き止まりか!まいった。「崖崩れの為通行不可」の文字に愕然とする。

Y山「はまったな…、w」

どうにもならない。スイッチバックを繰り返し向きを反転させる。

オレ「またあそこを通るのか…」

全員「…うッ」

しかたがない、今来た道を戻って行った。すでに雨は降っていなかったが、霧が濃くなって、10メートル先も見えない。

オレ「ちょっと、勘弁してくれー、なんも見えんぞ!」

Y山「ゆっくりな、ゆっくり。」

オレ「ここで対向車がきたらぶつかるぜ!?」

ガッとハンドルを切って、車道を離れたスペースで車を停めた。みんな、うすうす気がついていただろうが、さっきのトイレの場所だ。

K次「…もしかして、ここはさっきの場所?」

オレ「うむ、霧が晴れるまで少しがまんしてくれ。」

K子とK次は泣きそうな顔をしている。少し寝ると言ってオレは目をつむった。不自然なほど沈黙が続いた。

ふと気がつくと、外で話し声がする。振り返るとK子もK次もいない。Y山もいなかった。

K次「やばいですね…オレこんな道自信ないですから、Y山さんお願いしますよ。」

Y山「おう、ゆっくりだけど運転してくわ。」

K子「ほんとにSさんには何が見えてるんやろうね?…」

えっ???

オレ「…どういうことだ?」

K子「あっ、Sさん。」

K次「…言いにくいんですけど、Sさん何かにとり憑かれてませんか?」

えええっ!!!

Y山「通行止めの看板なんかないし、霧も出ていないんだわ…」

オレ「ちょっ…待って…」

と言いながら急にめまいがしてドアにもたれかかる。

Y山「ずいぶん前にライトがまぶしいって言った辺りから変なんだわ、お前…」

強烈に立ちくらみが襲ってきて立っていられなくなった。

オレ「俺は頭がおかしいのか…?」

後部座席にべったり座り込み、いつから自分が自分じゃなかったのかと問う。

K子「後続車がいなくなるまではいつものSさんやったよ。」

Y山「うん、急に追い越しさせるって言い出してからやな。」

K次「まあ、今はもう大丈夫みたいだし、ずっと運転してたから休んでくださいよ。」

オレ「すまん…たのむわ…」

Y山「まかせとけ。」

しかし、言ったそばからエンジンがかからなかった。

Y山「えっ?うそー?」

K子「ガソリン切れ?」

K次「バッテリーですか?」

オレ「換えてから一年もたってないぞ…」

K子「じゃあやっぱりガス欠?」

Y山「いや、半分以上はるかに残ってる。」

何度試してもモーターのうなる音だけだ。

オレ「誰か携帯つながる?」

みんな自分の携帯を見るが誰もつながらない。

オレ「電波の届くところまで行ってくるわ。」

Y山「一人ではだめだ。」

K子「Sさん責任感じてるのかも知れないけど、たぶん今、一番危険なのはSさんだから、一人で解決しようとしないで!」

…なにも言い返せない。

K次「そうですね、二手に分かれても、Sさんの危険とペアになったら一人でどうにかできないかも知れないですしね。」

ガッツリお荷物認定だ。

Y山「みんなで行くか!?」

車内においてあった懐中電灯をY山が持ち先頭を歩く。

同じく車中にあった傘をK子がさしている。木々を伝って大きくなった雨粒がバラバラ降ってくるからだ。

1キロも歩いていないと思うが、どうやら自分たちのいる場所が完全に山の陰になっていて電波が届かないらしい。

やはり峠を上るしかないようだ。

つづら折の不完全な舗装道路をてくてくと歩き、周りが森に囲まれてしまうと一層不安がつのる。

何段目かのカーブで先頭のY山がハタと電気を消した。

K次(どうしたんですか?)

とY山のそばに立つ。

Y山「K次、あれ見えるか?」

K次「!!!!!」

K次がのけぞるのと同時にK子が「ひっ!」と息を呑んだ。

カーブの先、道のない森の中に白い塊が浮いている。ビニール袋でも引っかかっているのかと思ったが、木にぶつかるわけでもなくゆらゆらと移動している。

K次(!なんすか!?あれは!!!)

Y山(おれが知るか!!)

K子が尻餅をつきそうになってオレが支えた。みんな微動だにしなかった。

どれだけ目をこらしてもその白い物体がなんなのかわからない。一番近いと思うのはゲゲゲの鬼太郎に出てくる一反木綿か。

その一反木綿が森の中をふわふわ漂っている。時間にして1分か2分ぐらいだったろうが、1時間以上立ちつくした気がした。

あきらかにそいつが近づいてくるのがわかった時、誰が言うでもなく全員が小走りに逃げ出した。地に足が着いていない。

先回りされるんじゃないかという想像を恐怖を押し殺して逃げた。

最後の曲がり道で見上げると予測不可能な動きで追ってきており、こいつは何かの意思をもっているとわかった。

Y山(やばい!やばい!やばい!やばい!!!)

必死の小声が恐怖をあおり、全力で車に駆け込んだ。息をきらせて、ハーハーいいながら、姿勢を低くし、車の中に隠れた。

K次(なんなんすかあれは!?)

Y(わからん!!)

オレ(みんな見えてるよな?オレだけまた夢の中じゃないよな?)

K子(シーっ!静かに!)

そっと覗くと白い塊は駐車場の入口あたりでふわふわしていた。不自然な姿勢のまま身動きできなかった。

どれくらいたったか、微妙な変化が起こった。

一反木綿は飛び跳ねるような動きになり、駐車場に入ってきた。後ろの席にいたK次がささやく

(あっちにもいますよーっ!!)

視界いっぱいの駐車場隅から似たようなのが現れ、キケケケケケッー!グケケケケーッ!と鋭い音を発している。

やばい!!

Y山(どーするよぉ!)

オレ(…戦う!)

K次(どうやって…、!)

オレ「こうじゃーーーーッ!!!」

キーをまわしドルンッとエンジンをかける。ハイビームにして一反木綿に突っ込んだ。

コンッカラカラカラ…ペットボトルを巻き上げたような接触があり、フロントから天井を何かがころがり落ちた音がした。

こなくそー!やけ気味に道路に飛び出し、タイヤのきしむ音をさせながら発進した。さきほどとうって変わって、空気が軽くなり、爽やかな木々の香りが満ちた。

そうとう離れた町までたどり着いたときには、

Y山「こうじゃぁ~~~ッ!!wwwww」

K次「こうじゃぁーーーーッッッ!!wwwww」

などとオレのまねをして笑いあえるようになった。

オレ「おれだけ夢見てた?みんな見たよな?」

Y山「え?S、また何かにとり憑かれたの?ボクたち何もみてないよwww」

K次「あ、Sさん急に「こうじゃぁ~~~っ!!」って叫んでましたよwwwww」

オメーらボコボコにすっぞw!!

とにかく、無事に帰り着くことができた。それ以降、あれは一体なんだったのか議論を繰り返したが、確かめるすべがないまま、K子の言った

「タヌキかキツネじゃないかな?」

が結論となっている。

そして、未だに話がくいちがう事があると、

「Sさんには何が見えているんですか?」

とからかわれている。

長文お付き合い下さってありがとうございます。