13/07/19
たいがいどのバイトにも、仕事ができて社員にもバイトにも親しまれてるバイトリーダーみたいな人がいると思うんだけど、俺が学生時代にしてたバイト先にもそういう人がいた。
名前はKさん。Kさんは仕事できる、顔はイケメン、いい大学いってて、さらに性格も良くてほんとみんなに親しまれてた。
俺もバイトしてる時は何度も助けてもらったし、バイト以外でも色々お世話になったりしてKさんが大好きだった。
バイト先での飲み会や忘年会でもKさんは常にみんなの中心にいて、場を盛り上げてた。
飲みつぶれた奴の介抱や、熱くなってケンカしそうな奴らがいたら止めたりと面倒なことも率先してやってくれた。Kさんは正にみんなの憧れだった。
そのバイト先には俺と同期のSって奴がいた。Sと俺は同い年で同期ということもあって仲が良かった。
けど残念ながらSはあまり仕事ができるほうではなく、よく社員に怒られていた。
そんなSだからしょっちゅうKさんに助けてもらってた。もちろんSもKさんのことが大好きで、よく三人でバイト後にラーメン食いにいったりしてた。
バイト先での飲み会があった次の日、大学もバイトも休みだった俺はSに呼び出された。
Sは前日飲みつぶれていたこともあってか、元気がない様子だった。
「二日酔いは大丈夫か?話ってなんだよ?」
そう聞くとSはゆっくりと話し始めた。
「先月あった飲み会なんだけど、〇〇がめちゃくちゃ酔ってたの覚えてるか?」
あぁ、あいつアホみたいに酔ってたなぁ。
「で、いつものようにKさんが介抱してくれてたじゃん」
「俺、結構遠くの席にいたんだけど、特に何も考えないでなんとなく介抱してるKさんの口元を見てたんだ」
「そしたらさ、なんて言ってんのかは全然わかんないんだけど、Kさん口元がずっと動いてんのよ」
「あれ?〇〇はどう見ても泥酔してるし、Kさん誰に話しかけてんだろ?とか思いながらボーッとそれ見てた」
へー…と相槌を打つとSは続けた。
「ほんで昨日の飲み会、お前も知ってる通り俺ベロベロに酔っちゃってすぐに記憶なくなったんだ」
「でも途中なぜかちょこっとだけ意識があってさ、その時にやっぱりKさんが俺を介抱してくれてたのがわかったんだ」
「その時に微かになんか聞こえてくるんだよ」
「ん…?Kさんなんかいってる…?」
「なんだろう…俺に何て言ってるんだろう…って思いながら耳を澄ましたんだ」
「すると微かにだけど、確かに聞こえてきたんだ、Kさんの声で」
「おい、死ねよ、なぁ、死ねよ、死ね、死ねって、お前みたいな奴死んだほうがいいよ、おい、死ねって、ほらさっさと死ね、さっさと死ねって、自殺しろよ」
「死ねって、クソが、お前が死ねばみんな喜ぶから、死ね、頼む、死ねって、なぁ、死ね、グズが、死ね、死ね、死んでくれ、飛び降りろ、死ね」
「頼むよ、死んでくれ、死んでくれよ、グチャグチャになってさ、死ね、一人で死ね、死ねよ、ほら、死ね、ほら」
俺は言葉を失った。とてもSが冗談を言ってる様には見えなかったからだ。
そしてSはこう続けた。
「…俺さ、Kさんにも、やっぱり悩みとか色々あると思うんだよ」
「俺はずっとKさんに頼りっぱなしで、甘えてた。正直みんなもそうだと思う」
「だから、俺はKさんに頼るのはもうやめようと思う」
「Kさんも俺らと同じ人間なんだよ」
確かに、Kさんが冗談ではなく本気で弱音を吐いたりしてるとこなんて見たことない。
Kさんはみんなに親しまれて、仕事ができて、イケメンで、本当にやさしくて…そんなKさんにも、心の闇ってやつが確かにあるんだ。そう思った。
「俺さ、今日Kさんと会ってみようと思う」
「大丈夫、バイトもやめないし、ちゃんと話するよ」
「あとこの話は誰にも言わないで欲しい。俺もお前に言ったことはKさんに言わない」
「休みの日に呼び出して悪かった、じゃあまた明日な!」
そういってSとは別れた。
正直、俺はまだ信じられなかった。まさかKさんがそんなこと…きっと、きっとあいつが酔っ払って聞いた幻聴だろう。
そうに決まってる。あのKさんがそんなこと…想像すらできない。
そうして家に帰り、無理矢理に寝た。
次の日、バイトに行った俺はSが死んだことを聞かされた。Sは昨日の深夜、裸で高速道路にいたところを車に撥ねられて死んだ。
発見された時はもう原型を留めていなかったそうだ。
Sの通夜ではみんな泣いていた。Kさんも泣いていた。俺は涙が出なかった。とにかく一人で酒を飲んだ。酒を飲んで、飲んで、飲みつぶれた。
目が覚めると、Kさんが俺を介抱してくれていた。俺が
「すいません、大丈夫です」
と言うとKさんは俺の肩をポンと叩いて一言だけこう言った。
「ざんねんだったな」
俺はそのあとすぐにそのバイトをやめ、大学も卒業して今は故郷を離れ働いている。
Kさんはどこかいい会社に入って早々に出世し、結婚して子供が産まれたと聞いた。
コメント
コメント一覧
酒席でのことだから、K さんも酔った時の無意識の言葉なのか、それとも病んでいるだけなのか
甘えと頼りにするって紙一重
頼りにされてうれしいっていう感情がすり減っちゃったのかな
Sのシの直前の対話者で、Sの葬式でもう投稿者への声かけが無効になって残念がるKさん、怖いな
徒歩で侵入できそうなところに痕跡がないか調べ、事故現場付近や最寄りのSAにSの車等がなければ
Sを裸に剥いた上で高速道路上でリリースした車がいる事になる
Sの精神科のお薬含む薬物の使用歴や当日の足取り交友関係と調べていけばKが捕まるのは時間の問題なはずなんだけどね
バイト先にも警察来なかったのが不思議だよね
「(仲の良かったSが亡くなって)残念だったな」と言っただけなのに
もうKの言動を色眼鏡でしか見られない。
Sにとっての誤算は彼がすぐにバイトをやめたのでKを貶める事が出来なかった
だからこれは正直な気持ちなの。
頼りにされて嬉しいなんていう感情は最初から無いのよ。
解ってない人が多くてうんざりする。
同期のSは比較され続けて追い詰められていた
逆にSの評価がさらに下がるだけだろうし
「アイツは出来ないから俺がやった方が早い」だといつまで経っても人は育たないし
向上心のある人間には苦痛な環境でしかない。
逆の奴にとっては天国だよ。全部そいつが抱え込んでくれるんだから
ローディーとか?
「自分以外全て馬鹿」って人は「俺様がやるこたぁない」=「誰かがやるからおれがやらなくてもいいじゃんか」っていう人の方。
「だって俺がやらないと誰もやらないんだから」と考えて「やる」人間はギリギリでやってるので「とりあえずこいつらはバカ」とは思ってるだろう。同時に自分の今いる場所ではない別の場所が上手く行っているのを見て「ああ、向こうは賢い奴で一杯だ。俺もあっち側に行きたい」と思うわな。
「できちゃう」人は、どうだろね、「なんでできないんだろう?」とは思うだろうが、「あいつらバカだからできないんだな」とは考えないだろうね。天才ってのはそういうもんらしいよ?
お前らだって死んでほしいよ
そら死ねって思われる方が自然だわ
K、よく耐えたなとしか
人を呪わば穴2つだからKもいずれ大変なことになるはず。
100点中2点くらいだね
というオチであっても面白いよね
よくこれネタに語れるなあ
いい大学出てて社会的地位は高いけど
自分は運動も成績もいまいちな凡人だから
Sが聞いたようなこと毎日親に言われてた
結構いるんだよね
周囲と協調する気ゼロで俺悪くないお前らが悪い理論で仕事をかっさらって
他の人間に経験させないもんだからいざ何らかの理由で本人が抜けた時に仕事が立ち回らなくなる
(しかもこういうのに限って鬱だのなんだので勝手につぶれるんだこれが)
本人は被害者気分でヒーロー気取れて気分いいのかもしれないけどメンタル含めた自己管理と後進を育てるのも仕事のうちだぞと言いたい
まあ職場がそんな状態で放置している経営者ってたいていブラックだけど
盛り込みすぎ
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