煙
15/10/10
美術品を資産として持っている企業に警備として勤めていた知人から聞いた話。

夜間、資産が収蔵されたフロアで発報が起きる事が何度もあり、音響機器などを納入している会社も警報機器の調査で何度も呼ばれたが、首をひねるばかりで原因究明はできなかった。

そしてあろう事か、警備の一人が警戒前に誰もいないフロアで

「今夜は静かにして下さい。」

と声を出したところ、その夜に限っては誤発報は起きなかったため、気になる隊員は実行していた。

ある夜、また発報。現場はあのフロアの収蔵室だ。研修を終えてやっと慣れてきた新卒の警備員の子が先輩の指示でフロアに向かった。

すると怪しい事に収蔵室の戸がドーンドーンと体当たりする様に響いている。

中に誰かいるのかと思い、無線を防災センターに入れると連絡を受けた先輩は外部巡回中の者を応援に向かわせた。

約3分で外周から現場に向った応援の先輩は、一旦フロアキーを持って応援に駆けつけた。

収蔵室前で立ち尽くす新卒と合流すると、ぼうぜんとしながら「いま音が止みました」と言う。

先輩は戸の外から中に誰かいますか?と呼び掛けたが返事はない。そこで念のため、防災センターに連絡を入れてから扉を解錠した。

室内をハンドライトで照らし照明を点けたが、不思議にも誰も中にいない。

見ると最近、美術品の移動で持ち込まれたと思わしき箱の上に、誰がフタを開けて置いたのか鉄の天明茶釜(てんみょうちゃがま)が置いてあるのが目に入った。

釜の鉄ブタがひとりでにボロッと床に落ちて金属音が鳴り響いた。ビックリした二人は、茶釜を見てさらに背筋が凍りついた。

「南無妙~」

と声がして……ありえない!小さなハゲ頭が茶釜から出てこようとしている。

思わず先輩の警備員はハンドライトを持ち替えその頭を叩いた。

「妙~……」引っ込んだ!

「妙~?」また出てくる!叩いた!

また引っ込んだ!

こんな事を繰り返しているうち、二人はこの行動に夢中になってしまい、防災センターの副隊長が不審に思って駆けつけた時には夢中で茶釜を叩いていた。

やがてこの二人の隊員のうち、高速警備に転職した者が間もなく車にはねられて死亡。

新卒くんは精神を病み、ニチレンシュウが来ると言い続けて休職の後に会社をやめて行った。

そしてこれを話した彼もまたその後にすぐこの警備会社をやめたのだ。