駐車場
15/12/06
私は、関東地方のはずれにある田舎の街で、一人暮らしをしているものです。

現在、その街に所在している中小企業で、会社員をして生計を立てています。

しかし私は、昔からずっとそこで暮らしていたわけではなく、数年前に、その会社に転勤するため、東京からその地域へと引っ越してきました。

会社には毎日車で通います。ですが、その地域そのものが、車なしでは生活できないようなへき地で、私だけではなく、社員の全員が各自の自家用車で出勤しています。

入社してから1年ほどたち、ようやく仕事にも慣れてきたころ、いつものように自分の車で出勤し、業務を終え、帰路に付こうと駐車場に向かうと車のドアの部分に ̄というような、擦り傷が入っていました。

走行中に、車のボディを何かにこすりつけた覚えは全くなく、誰かが意図して付けた傷であることは明らかでした。

私の会社は全員で40人程度の規模なのですが、同僚の方はみないい方ばかりで、そんな陰湿ないたずらをするような社員は、正直思い当たりません。

私のアパートは、近隣中学校の通学路沿いにあるため、

「アパートに駐車しているときに、中学生がいたずらしたのだろう」

そんな風に自らを納得させ、それについて悩むのはやめました。

翌朝、車の ̄はそのままで、そのほかの箇所にも、傷はついていませんでした。私はもう何もされることはないだろうと安心し、出勤しました。

しかしその日の業務を終え車に戻ると、傷は一つ増えており、 ̄|という感じで、縦棒が加えられていました。

出勤前に傷が増えていないことを確認したはずなので、出勤中につけられた傷であることは間違いありません。

会社には、社外の人間が出入りすることも当然あるのですが、私の席は窓際にあり、会社の外から誰かが駐車場に出入りしたのであれば、すぐに気づきます。

社外の人間が付けた傷とは、やはり考えにくいです。では、社内の人間だとするなら、いったい誰のしわざなのだろうか?

会社の雰囲気は、今時珍しく本当にアットホームな感じで、私に敵意を向けている同僚などは、まったく見当もつきません。

そして、その次の日も、また次の日も、傷は少しずつ増えていきました。最終的に付けられた傷は、コロスという文字になっていました。

私は途中からなんとなく、何と書こうとしているのかは、感づいていました。

途中から、恐怖心もなくなり、誰が、なぜこんなことをするのか、ただ、不可解で仕方ありませんでした。

あれから2年ほどの月日が過ぎています。相変わらずアットホームな会社で、仕事も順調です。あの時以降は、私の身の周りには、特に何事も起こりません。

ただ、あのとき私の車についたあの物騒な傷は、一体なんだったのか、忙しい日々の暮らしの中、ふいにすごく気になって、何とも言えない不気味な感覚が湧き上がってきます。

12月に差し掛かかり、冬の寒さも本格化してきた夜、この地域の冬はとても寒いのですが、空気がとてもきれいで、いつもたくさんの星が煌めいています。

上空を見上げると、あれは何かの星座だったのしょうか。

いつもよりも、さらにたくさんの星たちが、それぞれ思い思いの輝きを、広い夜空にちりばめられていました。

年末に向け、だんだんと忙しくなっていく仕事の日々、ふと、夜空をぼけーっと眺め、特に輝きの強さが目立つ星たちを線でつなげてみると、なんだかコロスという文字が浮かんでくる気がして、ほんのり怖くなりました。