屋上
11/09/29
うちの会社のビルに3つあった休憩室の1つが改装され、新しい部署が開設された。

代わりに屋上の一部が職員専用に開放され、ベンチが設けられた。好評だったが一月もしないうちに閉鎖された。

理由は、屋上から飛び降りるメガネの男を見たという多数の報告。そしてそのたびに呼び出される警備室からの苦情。

この話は安全管理委員会に正式な議題として出され、討議のすえ屋上は閉鎖された。

男はメガネにグレーのスーツで小柄。これといって特徴はない。革靴を脱いで一息もおかず柵を乗り越え、勢いよく飛び降りるという。靴はなぜかいつのまにか消えてしまっている。

俺は男を実際に見たわけではないが、会議に出席していた。その話を聞いて、こんなことが本当にあるのか、と驚いた。

その苦情数のわりには、社内ではあまり噂にはならなかったようだ。みんな気が触れたと思われるのが嫌で、表立って話したりはしなかったのか。

苦情は恐怖に耐えかねた者達と、警備室からの、規定にのっとった正式な報告書といった形で提出され、あくまで事務的に処理された。

屋上が閉鎖されたので、男の目撃談はパタリと止んだ。

一年後、閉鎖されている屋上に忍び込み、飛び降り自殺を図った社員がいた。その事件と例の苦情は関連付けられたりはしなかった。あの苦情の件は会議でも話題にも挙がらなかった。

俺はお化けを信じてるわけじゃないが、こんな世の中ではお化けも住みづらいわな。