夜道
06/08/14
満月の夜といえば思い出すのが俺が中2の時。

当時俺が通っていた中学校は自転車通学が禁止(健全な精神を育成するためとかいう意味不明な理由)で、学校から2キロくらい離れていた俺の家からも毎日歩いて通ってた。

夏休み2週間前くらいのある日、夜9時くらいまで部活の練習をさせられ、クタクタになって仲間達と家に帰っていった。まあこれはいつものことなんだが。

途中まではワイワイと話ながら帰っていくものの、距離が進むにつれ一人が家に着き、もう一人が家に着きと、結局最後に残るのは一番家が遠い俺一人になる。これもいつものことだ。

俺一人になると、大通りから脇の小道へと入り、家に向かう。

当時俺が住んでいた場所は、都会ではないがド田舎ってほどでもなかったので、大通りはまだ明るく車も多かったが、そこから一本横道に入ると、田んぼと静寂が広がる世界が広がっていた。

しばらく歩いているうちに、妙な違和感におそわれた。いつも歩きなれた道だが…何か違う。一体それが何なのかが分からない。

しずかな田園風景、吹き抜ける風、明るく照らす満月…何がおかしいのか…と思った次の瞬間、その違和感の正体がわかった。

後ろから照らす月灯りでできた俺の影のすぐ後ろに、もう一人の影があったのだ。なんで俺の他にもう一つ影があるんだ?いつから?

ちょうど曲がり角にあったカーブミラーでさりげなく後ろを確認してみて俺は戦慄した。

そこにはマスクを付け、帽子をかぶり、手にハンマーらしき物を持った男が俺と全く同じ歩調で歩いていた。

それを見た瞬間、叫び出したかったが、叫んだら殺されると思った俺は、とっさにすぐ横のあかりがついている家に

「ただいまー」

といって入り、出てきた家の人に今あったことを説明した。その家の人は事情を聞いたら俺を家まで送ってくれた。

その後、親と警察に行って、あの道で起こったことを説明した。次の日から、俺の中学校は自転車通学が許可された。