視線
12/02/22
私はビジネスビルの二十階で仕事をしている。

昨日の夕方、一日の仕事を終えてエレベーターホールへ向かった。

やって来たエレベーターは上の階で乗り込んだ人達ですでにかなりいっぱいになっていたけれど、何とか一人乗れるスペースがあったので乗り込んだ。

私の立ち位置はちょうどエレベーターの左右の扉の合わせ目の真ん前。扉はピカピカに反射する素材で出来ていて、振り返らなくても自分の背後が見て取れる。

途中までは携帯電話で時間を確認していたんだけど、ふと違和感を覚えて顔を上げてぎょっとした。

扉に映る私の背後の人達が、全員私を見つめていた。

もしかしたら私ではなく、私の前にある扉を見ているのかもしれない。でも私はかなりのチビのため、扉を見ようとするなら私の頭よりも視線が上に向かうはずなんだ。

確実に私の背後の人達の視線は、私の後頭部あたりに集中していて、扉を見ているとは思えない。冷や汗がどっと出た。怖い。でも振り返れない。

乗り込んだ直後から私の右斜め後ろで、のり合わせた同僚と話している女性の声がしていたんだけど、エレベーターの扉に映る人の誰も口を開いたりしてない。ずっと無表情でこっちを見てる。

どうして良いかわからなくて、視線がそらせずにそのまま背後の視線を目だけで追ってた。ほんの数十秒がまるで何十分みたいに感じられた。

エレベーターが一階について扉が開いた瞬間、ダッシュで飛び出して振り返らないでビルを出たけど…一体、何だったんだあれ…

ただの見間違いとか白昼夢なら良いんだけど…