ミイラ
08/02/13
もう20年くらい前になるかな。

ある日実家の父から電話があった。先日祖父の法要で田舎(父の実家ね)に帰ったとき、仏間で面白いものを見つけたから見に来いという。

実家まで車で30分ばかりだし、俺はさっそく行ってみた。

父は他の家族の目をはばかるように俺を手招きすると奥へ向かった。そして卓の前に座ると古そうな木の箱をとりだした。

そしてアゴをしゃくって開けて見ろという動作をした。俺はよく要領を得ないままフタをとった。

正直それを見た第一印象はウェッ、なんだこれといった感じだった。

わたの敷かれた箱の中に入っていたのは、体長20㎝程の猿の赤ん坊?のミイラだった。すでに目玉も鼻もなく。ぽっかりと穴が開いてるだけ。

剥き出しだ口にはギザギザと小粒な歯が生えているので、かろうじて人間とは違うなと思う。ただ猿とも少し違うような。

何コレ?俺は父にたずねた。父はニヤニヤしながらワカランと首を振った。

祖父の部屋には昔からおかしなものがけっこうあったそうで、なんぞ面白いものでもないかとあさっている内に、天袋の中から見つけたそうである。それを黙って持ち出してきたらしい。

俺も父もこういった珍品は大好きだったが、それにしてもこれはあまりに薄気味悪くまがまがしかった。

箱の面には何か札のようなものが貼ってあったが、文字はもうかすれていて読めなかった。

その日はそこそこいて帰ったが、翌日から俺は体調を崩した。熱があると言うわけでもないのに体が重く、体が火照った。何をするのもおっくうだった。

仕事も休んで部屋でゴロゴロしていた。翌日も休む。そこへ実家の父から電話が掛かってきた。

お前体に異変はないか、とたずねてくる。ヒドくダルそうな声だった。俺が状況を説明をすると父も同じ状態らしい。俺の頭にあのミイラの姿がよぎる。

そんな状態がダラダラと幾日か続いた後、再び父から電話がある。父の所に叔父(父兄弟の長兄)から電話があったそうだ。

あのミイラを持ち出したことかバレた。電話口で鼓膜が破れるほど怒鳴られたそうである。すぐにあれを持って戻ってこいと言う。あれを見た俺も一緒に。

俺と父は重い体を引きずって姉の運転する車で父の郷里にむかった。

到着すると俺達は再び叔父に散々小言を言われた後、今度は叔父の運転する車で檀家になっている菩提寺(ぼだいじ)へむかった。叔父はあの箱を脇に抱えていた。

車中父はあのミイラの事をたずねた、アレはいったい何なのですかと。叔父はぶっきらぼうに、あれは、くだん、だと答えた。くだんってあの生まれてすぐ予言をして死んでいく牛の妖怪か?

何でも数代も前のこの家の当主の嫁が産んだと伝えられているらしい。病死なのか、あまりにみにくいので間引いたのかはわからないと言った。

また嫁もその子を産んだときに死んだとも伝えられている。ずいぶんと昔の話らしいが、これから行く寺の記録に数行だか残っているらしい。

その後箱と俺と父は寺で経を上げてもらった。

つまりあれは人間ということになる。件(くだん)としたのは人と明言するのを避けたかったからではないのか。

そしてアレは絶対に持ち出してはならないもので、毎年決まった日に菩提寺で経を上げてもらうそうだ。ちょうど数日前がその日だったが見つからない。もしやと思って父に電話したそうだ。

叔父が言うには、オマエらのおかげで経をあげてもらえず、件が祟ったのだと言う。あのまま放っておけば二人とも死んでいたぞ、とも。



381:2008/02/13(水)03:42:26ID:+74VbuLU0
くだんって、うちの婆さんにも話を聞いたことがあるけど、あれって牛から産まれる妖怪じゃなかったっけか?

人間が産むこともあるんだなあ。知らなかった。