家
11/03/20
おれがガキの頃に体験した話だ。

おれがまだ小学生の頃、俺と友達数人で伊藤君って奴の家に遊びにいった。

伊藤君の家は結構大きな一軒家で、おれ達はインターホンを押して伊藤君を呼んだ。伊藤君は中々出ず、調子にのったおれ達はインターホンを連打。

少しして伊藤君が玄関から出てきた。伊藤君は玄関の扉を開けたまま、おれ達の横に並び

「うるさい~」

などと少し怒った表情を見せた。さらに調子に乗るおれ達はインターホンを連打し

「ピザの宅配で~すw」

などとふざけていた。

その間も伊藤君の家の玄関の扉は開きっぱなしだったため、家の中の構造が良く見える。

玄関を通ってすぐ右側に部屋の扉、その先にはトイレ?のドア、さらに奥にはリビングへと繋がる扉が見える。

前述した通り、伊藤君の家は広いため、リビングの先にもまた別の部屋があり、いくつ部屋があるんだ、などと考えていた。

伊藤君が出てきてからも、インターホンで遊ぶ友達はさらにヒートアップし、おれは家族に迷惑がかかるんじゃないかと思い始めた。そんな時、

「ガチャッ、バタンッ」

と伊藤君の家から、扉が開き勢いよく閉まる音が聞こえた。「家族の人かな?」おれも悪乗りする友達も顔を見合わせた。

「ガチャ、バタンッ」

また聞こえる、リビングの奥からだ。

「ガチャ、バタンッ」

次は2階から聞こえた。家族の人が怒ったのかな…?おれは

「お母さんたちいたんだ?」

と伊藤君を見た。伊藤君は絶句した表情でおれを見ると、自分の家へと視線を移した。

「今、家に誰もいない…。」

悪乗りしていた友達もそれを聞いた。もうインターホンには触っていない。緊張した表情で伊藤君の家をじっと見る。おれも見てた。

「ガチャ、バタンッ」

リビングの扉が開いた、開けた人は見えなかった、あけてすぐ隠れたのか…?

「ガチャ、バタンッ」

今度はトイレの扉が開いた、中にずっと入ってたのか…

誰かが言った「近づいて来てる…」

「ガチャ」

一番手前の部屋の扉が開いた。今度はゆっくりと開く。新しく、まだ綺麗な扉なのに、古びたドアのようなキィィっと響く嫌な音が聞こえてくる。

「誰もいない…」

扉からは誰も出てこないし、音も聞こえない。とりあえず安堵したおれ達は口々に

「故障か?」

「イタズラしてんだろw」

などと伊藤君を責めた。伊藤君は未だに不安そうな表情で自分の家を見つめている。

おれもホっと一息ついた、その瞬間

「バタンッ!!」

玄関の扉が勢いよく閉じた。

おれ達はまた一気に固まって伊藤君の家を見つめる。誰も動き出せない、伊藤君ですら動けない。その時、インターホンから音が聞こえた。

「お前、まだインターホンで遊んでんのかよ!」

おれは悪乗りが過ぎる友達を怒る。しかし友達はインターホンになんて触っていないと半べそで答えた。

「は…?」

インターホンから音が聞こえる。

「…ザザ…───ッザザ」

雑音ばかりで何を言っているのかわからない。

「お前、やっぱりお前がインターホンにイタズラしたんだろ!」

とおれはまた友達を責めた。
伊藤君は半べそで

「…インターホンの、向こうから音が聞こえる…」

「だから、こいつがイタズラしたんだって」

「それでも、誰が家の中からインターホンに応答したんだよ…?」

おれ達はまた固まって伊藤君の家を見る。玄関の扉の、郵便受けが開いているのが見えた。

最初に伊藤君が逃げた。続いて友達が逃げた。玄関の扉が少し開いたのを見ておれも逃げた。

その後は人通りの多い公園で休憩。門限の時間になるまで黙ってみんな一緒にいた。みんなが帰って、伊藤君のお母さん達が帰る時間までおれは伊藤君と一緒にいた。

それからは伊藤君の家には行っていない。

数年後、伊藤君は登校拒否になってしまい、最後に会った時にはゲッソリと痩せていた記憶がある。