不気味な記憶
16/12/27
怖い話には程遠いかも知れないが、人によっては奇妙な話です。自分にとっては何が起こったんだろうかと言う気味悪い話です。

五歳か七歳の七五三の日。

家から歩いて数分のところに美容院があった。七五三祝いに身奇麗に整えてもらうため、その日は朝から美容院に行っていたのだが、朝から土砂降り続きで、近場とは言え、美容院へは母親が運転する車で移動。

その後、父親も自分の車で美容院に合流。そのままどこかの神社に行くことになっていた。けれど、母親が何かを忘れたと言い、自宅へ忘れ物を取りに向かったのだが、ドカーンと言う大きな音がしてきた。

その凄い音は、停車していた父親の車に母親の車が突っ込んだ音で、美容院は一時騒然。

全身切り傷だらけだが意識もあり、立って歩ける母親が美容院に来たのが、自分にとって衝撃的だった。

その後、母親は救急車で搬送され、父親は付き添いで行ってしまったが、自分は伯母に連れられ、傘をさして歩いて自宅へ帰った。

事故当時は土砂降りで、美容院の駐車場に停車していた父親の車がよく見えなかったことと、神社の予約時間にあせったせいだと言う。

数十年後、今はその美容院もなくなり、そういえば近所に〇〇美容院って言うのがあったねと、母親と何気なく思い出話となった。

自分「そういえば、事故。あれには驚いたよ~」

母親「事故って?」

自分「お母さん、お父さんの車にぶつかって事故起こしたじゃん」

母親「何のこと?」

父親にも、伯母にも、当時美容院を経営していた小母さんにも聞いたが、誰も彼も事故なんてなかったと言う。

当時、土砂降りだったことや、美容院の立地、駐車場の位置、周囲に聞くとどれもこれもその通り。

意識のあった母親が全身切り傷だらけで、美容院の玄関にぼうぜんと座り込み体を横たえていく一連の記憶と、父親の怒鳴り声、救急車を呼んでいる美容院の小母さんの声とか、騒然としている周囲とか。

だが、母親は過去一度も事故を起こしていないと言った。ならば、自分のあの記憶はいったい何なんだろうか。

子供がよく何かの記憶と混合したり、夢で見たことを間違えていたりと、それと同じようなものなのかな、と自分でも思ったが、それにしてはあまりに記憶が詳細過ぎて気味が悪い。