【時空】会いたいと願う気持ちが時空を超えた

107 名前: ぶるぶる 投稿日: 02/08/20 02:01

私が小学校三年生位の時の話です。

そのころ、とても仲よしだった、きよみちゃんという女の子が、クラスにいました。
彼女と私は、毎日のように学校が終わると、お互いの家を行き来しては、ふたりで遊んでいました。


その日は、彼女の家の台所のキッチンテーブルで、ふたりでドラえもんを読んでいました。
その内容は、ドラえもんが、のび太に切抜き絵本のようなものを出してあげます。




108 名前: ぶるぶる 投稿日: 02/08/20 02:01

それには、ケーキやおかし、車など色々なものがあり切り抜いて組み立てると、本物のように、食べれたり、乗れたりするというものでした。

きよみちゃんと私は早速、


「おもしろい!まねしてみようよ!」


と、画用紙や、ハサミ、色鉛筆を持ち出しました。
もちろん本物になることなどありえないと、理解できる年齢でしたが、とても楽しかったのを覚えています。


そして、日も暮れかかり、私が家に帰らなければいけない時間になりました。




109 名前: ぶるぶる 投稿日: 02/08/20 02:02

きよみちゃんは、いつもそうするように、玄関の外まで、私を見送りました。

そのとき、きよみちゃんが言いました。


「ぶるぶるちゃん。今日のこと、大人になっても忘れないで」


私はきよみちゃんが、いきなり変なことを言うのには慣れていたのですが、そのときは、彼女の様子がいつもと違うので、なんでー?と聞き返しました。


今こうしてふりかえると、確かにあの日のきよみちゃんは、いつもと雰囲気が違ったような気がします。




110 名前: ぶるぶる 投稿日: 02/08/20 02:03

きよみちゃんは続けました。


「今日の私、32才の私なんだ」


ますます私には、訳が分かりません。
でも彼女は続けます。


「2002年だよ。32才。ぶるぶるちゃんのこと思い出してたら、心だけが子供の私に飛んでっちゃった」


はっきりいって、聡明とはほど遠かった(今もね)


子供の私は、なんだかわからないけど、2002年と行ったら、超未来で、車なんか空飛んでたりする、という考えしかないくらい遠い遠い未来。




111 名前: ぶるぶる 投稿日: 02/08/20 02:04

「ふーん。ドラえもんの未来からかー!」


なんて、ばかな受け答えしかできませんでした。
きよみちゃんは、そんな私を笑いながら、


「それが全然!マンガの世界とはちがうよー」


と言いました。
そして、私ときよみちゃんは、また明日遊ぶ約束をして、別れました。


今考えると、なんであのときもっと問い詰めなかったんだろうと後悔しますが、なんせ子供だったし、きよみちゃんも私と同様、ドラえもんの影響で、ふたりでよくSFチックなことを、夢見ていたので、別にきよみちゃんが私に言ったことが、そんなに変とも思わなかった。




112 名前: ぶるぶる 投稿日: 02/08/20 02:05

翌朝、学校に行くといつものようにきよみちゃんが私に、話しかけてきます。
まるっきり、いつものきよみちゃんでした。


そして、私もまた、きよみちゃんが私に言ったことなど、すっかり忘れて、そのまま毎日が過ぎて行きました。


そして、私たちは5年生になり、それと同時に私は地方へ引っ越すことになりました。
そしてそのまま、きよみちゃんと、二度と会うことはありませんでした。




114 名前: ぶるぶる 投稿日: 02/08/20 02:06

今年、2002年。私は32才になりました。
そしてハッとします。


あの日のきよみちゃんの言葉を思い出して。
もしかして、もしかして、もしかして..と。


私はその後も、引っ越しを繰り返し、今では海外在住です。
きよみちゃんを探したいのですが、結婚してれば名字も変わっているだろうし、どうやって見つけられるか。


あの頃の私は、片親だったので
(当時はまだ珍しく、世間からは白い目で
見られがちだった)


「ぶるぶるちゃんと遊んじゃだめよ。片親なんだから」


と、思いっきりよその子供の親が、私の目の前で言うなんてことも、珍しくなかったし、大嫌いだった先生にも、


「片親だからね。目つきも悪くなるんだろう」


と言われたこともあった。




115 名前: ぶるぶる 投稿日: 02/08/20 02:07

そんな中、きよみちゃんだけが、私の友だちで、子供時代の唯一の理解者であったと思う。
会いたいと思う気持ちがそうさせたのか、2週間ほど前に、"あの日"の夢を見た。


あの日と同じ、きよみちゃんのおうちの台所。
キッチンテーブルいっぱいに、画用紙と色鉛筆。


私が自分の家から持ってきた、コロコロコミックが二冊置いてある。




116 名前: ぶるぶる 投稿日: 02/08/20 02:08

(当時コロコロコミックは、結構高価だったので、私ときよみちゃんは、かわりばんこに買って、ふたりで回し読みをしていた)


台所からは、6畳ほどの居間が見え、きよみちゃんのお母さんが、緑色の座椅子に座ってテレビを観ている後ろ姿が見えます。


本当に何もかもが、私がこの夢を見るまで忘れていたことまでが、はっきりと、目の前にありました。


きよみちゃんが、ケーキの絵を画用紙に描いて色を塗り、私はその横でハサミを持って、きよみちゃんが描くケーキを見つめています。




117 名前: ぶるぶる 投稿日: 02/08/20 02:09

私は、夢の中で、


「これは夢だ」


と自覚していました。
きよみちゃんが、ふと手をやすめて、私を見ます。

そのとき、私は彼女に言いました。


「きよみちゃん。今日の私も、32才!」


きよみちゃんは、びっくりした顔をしたと思うと、私を見つめて言いました。


「忘れなかったんだ。ぶるぶるちゃん..」


きよみちゃんは、半分泣き笑いような表情です。




118 名前: ぶるぶる 投稿日: 02/08/20 02:09

私も、泣きそうになるのをこらえながら、言いました。


「ドラえもんの未来じゃなかったねー!」


そして、ふたりで泣きながらも、大笑いしました。
そして...私は目が覚めました。32才の私の体で。


私は、泣いていました。


ただの夢だったと思う。


でも、私は時空を超えて、あのときのきよみちゃんに、会いに行ったのだと思いたい。

きよみちゃんが、そうしてくれたように。






転載元:http://hobby2.2ch.net/test/read.cgi/occult/1037032744/