マヨイガ

152 :本当にあった怖い名無し:2012/12/31(月) 02:36:51.19 ID:trb9nl9d0

うちの地方に昔あったという言い伝えで、たぶん「マヨイガ」系の話だと思う


中学校で剣道部だったんだけど、夏休みの合宿で町のお寺を借りて泊まったときに五十年配の住職が寝る前に本堂に部員を集めて話してくれた


・・・昔々、村の百姓はふだんは山に入ることはあまりなくて
炭や木細工、鳥獣肉なんかは必要があれば山住みの者から野菜なんかとの交換で手に入れてた


もっとも焚き付けは薪と杉っぱで間に合うし、木製の農具なんかは村で作ってたし
塗り物の椀なんかは行商から買ってて、ほとんど必要もなかったらしい


それでも山菜やキノコなんかを採りにいくことはある
その場合でも何人かで連れ立っていくようにしてしかも踏み跡が道になってるところから遠く離れないようにしていたらしい


そうしないで道に迷ってしまうと山寺に行き着いてしまうことがあるからこの山寺というのは、ふだんからそこにあるわけじゃなくて道に迷った人の前に大きな山門が忽然と現れるという山門をくぐっていくと境内から寺の前に出て、表戸が開け放たれている


入ってみるとろうそくが灯ってて、線香もけぶっているのに人の気配がない
いくら呼んでもだれも出てこない


もとの道に戻るには、本堂のお釈迦様の像の後ろに地下に通じる穴があって
ちょうど善光寺の戒壇巡りのような感じで人ひとり通れるくらいの幅


ただしもともと真っ暗な地下洞窟だけど、必ず目をつぶって歩かなければならないという
どちらかの手で壁に触れながらずっと歩いて行くと、ふっと壁の手応えがなくなってそこで目を開けると、いつのまにか見知った山道に立っている






153 :本当にあった怖い名無し:2012/12/31(月) 02:37:21.67 ID:trb9nl9d0

これ以外の方法では元の道に出ることはできないらしい
山寺の山門に入らなければ山中でただ迷うばかりで疲労死が待っている


地下洞窟で目をつぶらなければ、どこまでも果てしなく洞窟が続いて出口がない


今にして思えば何かのロールプレイングゲームみたいな感じだけど
この話を聞いた当時はそういうのを知ってる人はまわりにはいなかったな


それから最も大切なのは、絶対に寺のものを持ってきてはいけないことで
欲にかられてほんのちょっとした何かでも持ってきてしまうとその人は村に戻れるけれども名前をなくしてしまうという


この名前をなくすというのも意味不明だけど住職はくわしく説明してはくれなかった

もしかしたら村の自分の家やなんかががなくなってしまうということかとその時は考えた

でなければ家族を含めて村のだれも自分のことを覚えていないとか


奇妙な話なんでずっと印象に残ってるし
同窓会をやったときには元の剣道部員の間でこのことが話題に出てた


一番不思議なのはこの山寺を出て村に戻る方法なんかがどうやってわかったのかということで大学のときに町史や郷土史の本なんかをあたってみたけどそれらしいのは載っていなかった


住職が中学生を喜ばせようとして作った話というのが一番可能性が高いんだろうがもうとうに他界してしまってて聞くことはできないんだな






175 :本当にあった怖い名無し:2012/12/31(月) 22:32:58.21 ID:1a8etKJv0

>>152

マヨイガって持ち帰りおkな所とダメな所の2パターンなかった?
キツネが騙してるパターンも入れれば3つか


ダメな所から持って帰ると、置いてけ掘になるか
代わりになにかを渡さなきゃいけないのがお約束的な


持ち帰りおkだと、何も持たなくて帰ってくると
後日、向こうからお届けにきたりする的な


だから、マヨイガにあったらなにも持たずに帰れば
どのパターンでも酷い目には合わないんじゃ?と思ってる






177 :本当にあった怖い名無し:2012/12/31(月) 23:17:02.67 ID:y+ptIh0oP

>>175

迷い込んだ先で宴会の支度がしてあって、食べずに地元に帰ったら、食べたか、メインの皿に料理が盛っていたか聞かれて、食べて居ない、盛っていたと答えたら、
よかった、もし空の皿だったら命が無かったところだ、と言われた


って話なかった?






155 :本当にあった怖い名無し:2012/12/31(月) 11:49:58.92 ID:xhl4fial0

>>152-153

寺の物を持って来てはいけないというのが興味深いですね。
そのお寺は常世にあるのでしょうか。


あの世の物を持ってくるとこの世の住人ではなくなってしまうという意味なのか。


伊弉冉命が迦具土神を産んで黄泉の国へ旅立ち、悲しんだ伊弉諾命が常世に赴き、イザナミに問い掛けた所、


「黄泉戸喫(よもつへぐい)をしてしまったから戻れない」


と言った話がありますが、似たような感じを受けます。






166 :本当にあった怖い名無し:2012/12/31(月) 17:02:57.28 ID:+QNEeI/+0

>>152-153

マヨイガの方は何か物を持ってきた方が良いんだけど、
そっちは駄目なのか。






167 :本当にあった怖い名無し:2012/12/31(月) 20:18:40.29 ID:jijf0APT0

本家マヨイガは迷い得みたいな感じだけど
こっちのマヨイガは迷い損ってこと?






181: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/01(火) 00:00:21.88 ID:9hGqG8NzP

迷い家というのは、山の中に我々の時間の流れと違う世界があり、そこで暮らす人々は老いの速度が常の我々より非常に遅いという幻想。 


戦国時代に人の来ぬ山間に落ち延び、隠棲する敗走者たちの生活の印は、彼らの雑器が川に流れてしまう事などで発覚するが、その彼らは時間の流れから乖離した異界にいるのだという幻想。 


ヤマノモノ、またはヤマヒト(山人、中国の野人のようなもの)に連れ去られた娘が、その娘の若かりし頃を知る者によって何十年も経ってから偶然山中で発見されるも、まったく年齢をとっていなかったなどという話が東北や九州に残っていた。


それも山中の異界に暮らす者の虜になってしまった為に、生者の理からドロップアウトしてしまった哀れな犠牲者という幻想もある。 


同じような話はドイツのグリム兄弟が苦労して集めたドイツ伝説集にもある。 


膳椀伝説などはまったく日本と同じだが、ドイツでは貸してくれる存在は侏儒(コロボックルのような小人)と認識されている。






202: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/01(火) 16:09:21.65 ID:zVCVqLeu0

>>181 

『伽婢子』にそういう話あったね。
 
迷った人がたどりついた楽園のような山中の村に住む人々は、数百年も前の戦から落ち延びてきた人たちだった…という。 


元は中国の桃源郷伝説から来てるというけど、現在と違って通信機器もメディアもない環境で外界と途絶した生活を送っていたら、手持ちの情報・認識が代々伝わっていくしかないわけで、そういう古い知識だけを持った集団に出会ったら、『前時代の人』と認識してしまうこともむべなるかな…なのかな。 


自分の住んでるとこから車で1時間くらい山に入ったとこに、平家の落人村の館跡とされるとこがあるんだけど、 
(さすがに途中からは車は入れない。自分も断念したw 人のブログでレポ見たけど、その人はオフロードバイクで行ったようだった。) 


場所がどうこうってんじゃなく、そこまで入ってってそこで生活することを選んだ人の気持ちというか意思というか、そういうものに戦慄する。






196: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/01(火) 13:18:34.00 ID:xd8TMvT00

マヨイガってなんとなく昔の豪邸なイメージ 
鎌倉とかその辺の桧皮葺きの武家屋敷風の 


探せば昭和の木造平屋とか、オール電化の鉄筋コンのマヨイガもあるんかね?






197: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/01(火) 13:26:21.60 ID:NggHlftq0

マヨイガから物を持ってきて、それから金持ちになった系の話は民俗学的には富貴起源説話と言われてるな 


身分制度が固定化された江戸時代に農村の中でも貧富の差があるのを理由つけるための説話群で昔祖先が通りすがりの旅人に親切にしたから・・・ 
という蘇民将来系の話もこれに入る






206: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/01(火) 17:18:29.48 ID:vaxujIQI0

「山の老人」の伝説も一種の隠れ里だよね






213: 本当にあった怖い名無し 投稿日:2013/01/01(火) 23:01:45.92 ID:nLWHauzJ0

隠れ里伝説だとちょっと変わったのがこれ。 


修行僧が大和の国で修験道を歩いているうちに道に迷い、見知らぬ山里にたどりついた。 


のどが渇いていた僧は里の入り口にある泉で咽喉を潤そうとしたら、湧いていたのは水ではなく酒。 
それまで飲んだこともないような美味だった。 


僧を見つけた里の者たちが集まってきて、僧を取り囲む。
僧がここはどこかと尋ねると、人々はここは隠れ里で、よそ者に知られると困るからお前を殺すと言った。 


僧は仏に誓ってこの里のことは誰にも言わないから助けてくれと嘆願し、帰り道を教えてもらう。 


しかしこの僧は家に帰ると、酒の泉の郷を見つけたことを自慢してまわり、血気盛んな若者たちがこの里を奪って酒を我が物にしようとたくらみ、僧を道案内にして山に入って行った。 


何日たっても、誰一人として帰ってくるものはなかった。





引用元:∧∧山にまつわる怖い・不思議な話Part66∧∧