a0016_000181

46 :
雷鳥一号 ◆zE.wmw4nYQ:04/05/15 00:56 ID:gsYipgG2

知り合いの話。 


ロッククライミングをするために岩場へ向かう途中のこと。 
狭い登山道の向こうから、誰かが歩いてきたという。 
片足を引き引き、頭も左右にふらふらと、奇妙な歩き方をしていた。 
さては怪我でもしたのかと、彼は小走りに駆けよった。 

登山者は近くで見ると、それはひどい有様だったらしい。 
折れた手足からは骨が突き出し、シャツはどす黒く染まっていた。 
頭の鉢は欠けて脳漿らしきものがこぼれている。 
歩いてはいたが、明らかに滑落死体だった。 

しかし、それ以上に彼を恐怖させたのは、その登山者の顔だった。 
虚ろな目を見開いたその顔は、間違いなく彼自身のものだったのだ。 

硬直した彼の横を通り過ぎ、彼の亡骸は麓の方へ下っていった。 
彼はその日、予定していた岩登りを取り止めたという。