15/05/15
この間、同じ職場のEさんという人が退職していったんです。
彼女は30代後半。色白で華奢でとても綺麗な人でした。彼女は私と仕事をしている間に一回離婚して、そしてその数ヶ月後に違う男性と再婚をしました。(なので一回名字が変わった)
私はすごく親しくしていたわけじゃないんですが、彼女が退職する時、昼休みにちょっと呼び止めて。
「そういえば、どうして突然退職することにしたの?再婚した旦那さんが転勤とか?」
「ううん、旦那は転勤はないの。自営業だから…」
「あ、もしかして赤ちゃん?おめでた!?」
そうだったら、すぐにお祝いを言おうと明るく言ったのですが。すると彼女の顔がとたんに曇りました。
彼女は前の旦那さんと結婚していた5年間、赤ちゃんが出来なかったようで、もしかして離婚の原因も不妊が原因?とよけいな勘ぐりをしていたので
あ…言ったらまずかったのだろうか…と自分の浅はかな発言に後悔したのですが…。
「ううん…違うの。でもさ…よかったら聞いてくれる?」
返事をする前にやんわりと手をひかれて、人の全くこない階段の下まで連れていかれてしまいました。
「今から言うこと誰にも黙ってて。親にも友達にも相談出来なかったの」
以下、彼女が私の返事や相づちも聞かず、うつむいたまま独白した話です。
「前の旦那と結婚して…5年…。実は私2回妊娠したことがあったんだよ…。でもね、2回とも産めなかったの。
流産とかじゃなく、経済的な問題じゃなく“産めなかった“の。妊娠している時に夢を見たの。もーすっごくリアルな夢。
それは誰かの視点なの。私は夢の中で暗い道を歩いているの。そうすると前方に女性が歩いているのが見えて、私はそれにむかって突進していくの。
ドン!と音がしそうなすごい衝撃が起きて、気づくと女性が倒れているの。自分の手が震えているのがわかって、見ると、血まみれの包丁が…。
それから、場面が変わって私は誰かの寝室に入っていくの。ベッドの上には誰かが寝ていて、私は布団の上からその人のお腹をなでるの。
女性はお腹が大きくて…妊娠しているんだというのがわかった。どこかで…どこかで見たことがある。
寝ている人を見たことがある…と思ったら、それは私。私が寝ているの。夢の中の私は私のお腹の中にぐっと手を入れて…」
「え…?」
そんなことを明るい昼間の、しかも会社の昼休みに突然言われて、あっけにとられたのですが、彼女はかわまず続けました。
「そのままぐーっと中に入っていったの。中は暖かくて、暗くて、そしてすごく安心する気持ちがいい場所だった。
私はそのまま、夢の中で眠りに落ちたの。誰かに守られているんだ、という気持ちで安らぎながら…」
もうびっくりして言葉もありません。
彼女は私を見もせずに続けました。
「そんな夢を最初の妊娠の時に何度も何度も見たのね。でも場面はいつもいつも違うの。
誰かを刺し殺す夢もあれば、開いている2階の窓から侵入して、寝ている女性の首をしめて殺したこともあったし、小さな子を連れ回して、あげく川に突き落として殺したこともあった。
でも、必ず最後は寝ている自分の所へ帰るの。自分の中へ…お腹へ入っていくの。そこで終わるの。だから…最初の子は…旦那に黙って…おろしたの」
「で、でも…初めての妊娠でブルーになってたり、ノイローゼ気味だったり…」
「そうかもしれない。実は妊娠中の人達が集まるフォーラムに顔を出したり、ネットでそういう事例がないか検索したりもしたし、色々したんだけど、あんまりにも、あの夢の自分がリアルで…。
肉を切り裂く血の匂いとか…首をしめた時の手の感触とか…突き落とした子供の髪の毛とか…気持ち悪くて」
「もしかして、それ、2回目の妊娠の時も見たの?同じ夢」
「2回目は…もっともっとひどかった」
「まさか2回目も?」
彼女は黙ってうなずきました。
もーなんて言ってあげたらいいのかわかりませんでした。私は独身で子供もいないし。
妊娠中ってそういうことあるんじゃないのかな?とか考えすぎだよ、とか。そんな深刻になることないじゃない?とか。大丈夫だよ~と、明るく笑ってみたり。
でも、彼女は暗い顔のままうつむいているだけです。
「だから…別れたの。私と前の旦那の子…でなければ…もしかして、と思って…」
「…そ、そんな…」
そこで昼休み終了のチャイム(うちはチャイムが鳴る会社なんです)が鳴ったので、彼女は“つとめて明るく“風に(ぎこちないけど)笑顔をつくって
「もう大丈夫だと思うんだけどね、相手が違えばきっと、と思うんだけどね。ねぇ?」
そうそう、大丈夫だよ、とか。
気にすることないよ、とか。
そんなような言葉しか口に出来なかったような気がします。次に妊娠する時はもうそんなことないと思うよ。とかなんとか。
そして彼女は退職していきました。それが1月の下旬の話。
そして、昨日5月5日、GWの最終日前、彼女に偶然街でばったりあったんです。久々に逢う彼女は、なんだかますます色が白く、華奢になった気がしました。
「久しぶり~!元気?もーうちなんてEさんがいないから忙しくてさぁ~!」
あの時の彼女の独白なぞすっかり忘れて、私は会社の近況を話そうとした時。
「Kさん…やっぱりダメかも…また見たよ。今度はもっともっとひどかった…。じゃあ、元気で。さようなら…」
汗ばむほど天気のいい日でしたが、冷水を頭から浴びせられたようにぞーっとしました。
コメント
コメント一覧
でもこのままだと、もし生んでも愛せないしなあ
宅間守の母親が宅間を妊娠中にこの子は生んじゃ駄目な子だって
思ってたらしいね
一度お祓いとか霊視を受けたら呪縛が解けるか諦めもつくかもね
おんなじこと思った。
宅間母もこんな感じだったのかな。
うち、あかんねん、これ、おろしたいねん…
死と再生は隣り合わせだからと
そもそも2回妊娠したんだろ?それどうしたの?産めなかったてどうしたの、そっちの方が気になるよ。
それにしちゃ気味悪すぎるか…
結構有名な話なんだけどなぁ、、
せめて自分の母親にとか相談出来なかったのかな…創作であってほしいわ
産むのもおろすのも誰の同意も要らないよ
大人だから
そこまで仲良くないからじゃないかね。
一定の距離がある相手の方が言いやすい場合もある。
今回のは元旦那に黙って堕胎してる以上言えないし、自分の親兄弟姉妹なら心配をかけてしまう。
気のせいと笑い飛ばしてくれそうで、尚且つ精神的な負担になりにくそうな相手が報告者だったと。
普通に社会生活してたら、この程度は想像つきそうなもんだけどね。
ネットにいくらでも出て来る。
オカルトでも何でもない。
ちなみに私の親戚は、霊感娘だったのに、姪を産んだら霊感体質がなくなっちゃったw
こんな事、他人にペラペラ喋る事でもないし、こんな場所に上げるべきじゃ無いよね。
普通に社会生活してたら、この程度は想像つきそうなもんだけどね。
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